…続き。
快感の絶頂のとき、恐怖に近い気分を味わう人がいると聞いたことがあります。
それが、僕に来たんです。
何度も体位を変え、最後にまた正常位に戻りました。Sも射精が近いのか、激しく息を乱しながら、今まで以上に一心不乱に腰を打ち付けます。
そのとき、僕の頭のなかで、何か波のようなものが迫る感覚がありました。遠くから来たような波が、彼のピストンとともに大きくなり、僕の意識を飲み込みように押し寄せるんです。
(恐い)
とっさにそう思いました。
(飲まれたら、どうなる)
「S、ダメっ」
そう叫びました。
「ああ?」
「気持ちよすぎっ…。おかしくなりそう…」
「ムリ。止まんねえって…」
「変になっちゃうよ…」
「俺も、イキそうだから…」
「イキそうなの?」
「もうヤバイ…」
「中に出して、俺の」
Sが僕の体を強く抱きしめました。そして。
「あっ、イクっ…。イクよ」
はあっ、と息を強く吐いて、彼の腰が止まりました。アナルの中でペニスが脈打ち、ドロドロとしたものが放たれます。その瞬間、僕の頭も真っ白に。何か叫んだような気がしましたが、もうそれもわからないくらい、頭は快感でめちゃくちゃでした。
ただ、眉を寄せ、深く目を閉じながら恍惚としていたSの顔だけははっきり覚えています。
二人とも、抱き合ったまま、ずっと動けませんでした。言葉も交わせないような、深い余韻で。
肩で息をし、水でもかぶったように汗をかいた体。でも、シャワーに立ち上がることもできません。そして、そのまま眠りに落ちていきました。
…朝、Sはちょっと恥ずかしそうにしていました。「ケツ、痛くないよな?」とごまかすように聞きながら。
そんな彼がかわいくて、僕は朝から何度もキスをしました。
汗くさい体を流すために一緒にシャワーを浴びます。部屋に戻ってからカーテンを開けると、外は雲ひとつない真夏の快晴でした。そこから見える西新宿の高層ビル群が、朝日にきらきらと輝いています。窓を開くと、風が濡れた髪を撫でるように吹いていきました。
「これから、どうする?」
Sが聞きました。朝飯はどうするとかいう意味でしたが、僕はわざと答えました。
「これから俺たち、つきあうんだろ?」
Sはハッとした顔になり、そしてはにかみながら言いました。
「ありがと、な」
「え?」
「実はさ、男のこと本気で好きになったの、初めてなんだ。だから、あんな強引なことしちゃって。嫌われてないか心配だった」
「ううん、すごい嬉しい。男の初恋が俺だなんて」
「…Kと会えて良かった」
「…俺も、Sと会えて」
夏の風を感じながら、二人とも長い間、唇を重ねていました。
長かったですね。これで終わります。
エッチシーンが下手だったらごめんなさい。
互いに仕事を始めた今も、Sとは順調です。忙しいから、あんまり頻繁には会えなくなりましたが。
でも、ここに書いたセックスのことを思い出すと、今でも燃えるんですよ(笑)
最後にノロケてすいません。それでは、さようなら。