時は経って中3になった。
俺は密かに高校は都立へ進学し直すことを考え始めていた。
姉もそういう進路だったし、
一から環境を変えるのもアリだと思った。
今が不満な訳じゃない。
逆に言えば恵まれていると思う。
でも新しい道へ行くのも悪くはなかった。
真剣に迷った俺は佐藤先輩に相談した。
俺「あのさ…高校は外部に行くかもー」
佐「なんで?そんな成績ヤバいん?」
俺「ううん違うよ、環境変えるのもアリかなって思ってさ」
佐「それ、自分で決めたん?」
俺「うん…」
佐「それもいいかもな」
俺「えっ…」
佐「阿部ちゃんが決めたことなら俺が言うことなんてないし、いいんじゃない」
無責任に響く先輩の言葉。
俺はどこかで期待してたのかも知れない。
先輩に止めて欲しかったのかも知れない。
「行くなよ」って。
俺「そっかぁ、だよね…」
俺は急に胸が苦しくなった。
ハッキリ分かるぐらい泣き声だった。
佐「阿部ちゃん…?」
俺「うん、やっぱ外部行くわー」
佐「阿部ちゃん、どうして…」
俺「相談乗ってくれてありがと」
俺は耐え切れなくなって逃げようとした。
先輩は力強く腕を引っ張って来た。
佐「俺、阿部ちゃんのこと傷つけたか?鈍感だから言ってくれなきゃわかんねーよ」
俺「相談しなきゃ良かった…俺、自殺行為しちゃった」
笑い泣きするしかなかった。
俺「先輩、言ってくれるかなって思ってた。行くなって。俺、バカだよね」
沈黙が続いた。
今すぐ帰りたかったけど、後悔すると思って足が動かなかった。
すると予想外のことが起こった。
佐「…めていいの」
理解するのに時間がかかった。
先輩が後ろから抱きついていた。
俺「先輩っ?…」
佐「俺が止めていいのかよ」
俺「ちょっ」
佐「行くな。外部なんか行くな。」