体育館の中ではすでに新入生が何人かと、女の子らでごった返していた。女の子はチーム一つ作れそうな人数で、ゆうすけは俺の顔を見ると得意げに、
「俺ってすごくね?」
と、
「お前の好みどれ?」
ときかれたので、
「全員可愛いよ。チーム作って監督やれば?」とそっけなく答えた。
それから、練習風景を新入生に見せて、おおかたどんなサークルなのかを説明した後、部長が、
「大体こんな感じかな。入部してもいいって奴は残ってください。」
そう部長が言うと、女子は仲の良さそうな2、3人を残して殆どが帰った。男子も結局入部すると決めたのは山本を含め5人だけだった。ゆうすけは残念そうにしていたが、俺はどうでもよかった。それは、女子が帰ったことだけではなく、男子も少ししか残らなかったこともだ。
高校生くらいまでの俺だったら、こういう出会いがあると嬉しかった。いい格好して、気に入られようとしただろう。
今はそんなことはしない。逆に、誰も俺のことを掻き乱さないでくれと思っている。
サークルが終わって、新入生を囲んで、新歓コンパをいつやるかを話あっていた。去年は、新歓に30人近く来たが、結局入部したのは俺とゆうすけの他に3人だけだった。新歓に相当金がかかったらしい。それで今年は興味の無い奴は早々に帰ってもらったのだ。
皆が盛り上がっていると、山本が話掛けてきた。
「先輩、フットサルうまいですよね。俺、運動苦手なんで不安ですよ。他の奴ら経験あるみたいだし。」
「高校まで何もしてなかったの?」
「俺高校までは書道部でした。」
そう言った山本は恥ずかしそうだった。俺は何か言わないといけない感じがして、
「そういえば、下の名前何ていうの?」
「ひでかずっていいます。」
「じゃあヒデだな。改めてよろしく。」俺がそう笑顔で言うと、山本はすごく嬉しそうな顔をして、
「はい!よろしくお願いします!」と握手をしてきた。
俺はとても危険なものを感じた。