いつから好きになったのかは分からない。
ただ、昔から隣にいる幼なじみの大輔。
それは僕にとって必要不可欠な存在となっていた。
でも、大輔は僕を好きなわけがない。
だって僕らは男同士だから。
1人歩く帰り道。
時間は午後8時前。
体がダルい。
1時間近く歩いてるせいもあるが、それ以上に今日の相手の問題だ。
激しい、一方的なプレイ。
疲れただけで、気持ち良さはあまりなかった。
しかも、向こうの都合でその場で帰らされて。
あと30分くらいは歩かなきゃ。
ヤだなぁ…。
そう思いながら溜め息を吐いた時だった。
「おーい!ハルー!」
呼ばれて振り返ると、遠くから自転車に乗った長身の男が手を振っている。
それが大輔だとはすぐに分かった。
いくら地方と言えど、土曜の住宅地付近の通り。
人が結構いるのに大輔は再び「ハルー!」と大声で呼んだ。
周囲の人達が僕や大輔を見る。
恥ずかしさから走り去りたくなった。
だが、逃げて更に大声で呼ばれたら厄介だ。
なので僕は大輔に近付いていった。
笑顔で目の前に停まる大輔。
「大輔、うるさい」
「だってハルが遠くにいたから」
「よく僕だって分かったね」
「そりゃ、15年以上ずっと一緒にいるからね」
僕と大輔は生まれた時から現在(高1)まで一緒にいる、所謂腐れ縁というやつだ。
「で、ハルは何してんの?めっちゃ疲れてるけど」
「ちょっと用事があってさ」
「ふーん。後ろ乗れよ」
「いや、いいよ」
尻痛いし。
「じゃあ俺も歩く」
「…じゃあ乗るよ」
こいつはちょっと強引で。
僕の性格を良く分かっている。
後ろに跨り、大輔に抱き付く。
大輔の匂いがした。
すぐに漕ぎ出す大輔。
「大輔は何してたの?」
「カラオケ行ってた」
「一人で?」
「一人で」
寂しいやつだ。
友達は多いのに何で遊ばないんだろ。
まぁ…趣味の問題か。
大輔は爽やかでスポーツマンな表の顔と、オタクな裏の顔がある。
僕とカラオケに行った時はアニソンやボカロしか歌わない。
そのせいで僕まで染まってきている。
でも、大輔が僕にしか見せない顔があると言うことが嬉しかった。
ニヤケた顔を隠すため、更に強く抱き付いた。
「どうしたんだ?」
「なんでもない」
密着するこの時間がとても幸せだった。