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続き書きます。
荷物を持って、3人で校門を出た。
「谷津君も近くなの?」
「俺ン家、コイツの隣だからさ」
じゃあ幼なじみってやつなのかな?
「中澤は何でこんなとこに引っ越してきたの?」
山下君が訊いてきた。
「えっと…」
理由はいろいろあった。
中学に入学してすぐ、父親がリストラされて、母親は家を出て行った。
父親と2人で貯金を崩して何とか生活していたが、やはり生活は苦しく、性格は荒んでいった。
遊ぶことも出来ず、次第に孤立し、いじめにもあった。
そして、最初は近場でバイトや派遣での仕事を転々としていた父親だったが、決まった仕事を探し、やっと決まったのがここにある工場だった。
工場と言っても鉄工関係だけど。
前の仕事も鉄工だったから、きっと続けてくれるはずだ。
でも、知り合って初日の人に詳しいことは話せないため「父親の仕事の都合でさ」と答えた。
「ふーん」
『普通だなぁ』と思っているのが分かってしまう返事だ。
「母ちゃんも働いてんの?」
「え?」
今度は谷津君が訊いてきた。
まさか母親の話を振られるとは思っていなかった。
「母さんは…その…」
離婚したって言うのが怖かった。
1年の時に打ち明けたら『母親が出て行った』とからかわれ、イジメられたからだ。
緊張して、学ランの裾を強く握った。
言ったって大丈夫。
良い人達だからイジメたりしない。
きっと軽く受け止めてくれる。
でも、もし嫌われたら?
せっかく仲良くなれそうなのに。
嫌われたら?
後から谷津君に聞いたが、この時の僕は、俯いて目が泳いでたらしい。
「あ、何か悪いこと訊いたかな?」
谷津君が気まずそうにしている。
笑い話くらいの勢いで言っちゃえばいいのに。
僕は馬鹿だ。
「バカ文!(谷津君の下の名前が隆文だから)」
山下君が谷津君の頭を軽く叩いた。
「イテッ。何すんだよ」
「中澤、母ちゃんいないんだろ?」
「ッ!」
山下君に言われドキリとした。
「引っ越してきた時に荷物入れてんの俺見てたんだよ。同い年くらいのやつがいたからさ。そしたら、母ちゃんらしい人は見当たらなかったから。今の中澤の様子で分かったってのもあるけど」
近付いてきて頭を撫でられた。
「離婚したの?」
山下君の問いに僕は無言で頷いた。
「そっか。いつも家には1人?」
「うん」
「じゃあ、俺ン家来いよ!1人でいたってつまんないっしょ」