リビングらしき部屋から出てきたのは、いかにも「母ちゃん」って感じの恰幅の良い人だった。
「隆文君と…えっと…?」
「今日来た転校生」
「中澤和哉です」
ペコッと頭を下げた。
「あらあら、うちの馬鹿息子がこれからお世話になる子だったのね。仲良くしてあげてね」
「いえ、僕の方がお世話になったり、仲良くしてもらう立場だから…」
年上の人と話すのに緊張して、変に堅いことを言ってしまった気がした。
「謙虚な子だねぇ。うちの泰明も見習ってほしいわ」
「親に似たんだよ。てか、部屋行こ」
靴を脱ぐ山下君。
谷津君も同じだ。
僕は靴をちゃんと揃えて脱ぎ、何となく山下君と谷津君の靴もついでに揃え、山下君のお母さん(以下おばさん)に頭を軽く下げてから山下君の後を追って二階に上がった。
二階の一番手前が山下君の部屋。
中は普通な男子の部屋感じ。
漫画やゲームがある。
ベッドや机がある。
そんな感じだ。
「中澤は格ゲーとかやる?」
「僕、ゲームはあんまりやったことないからさ」
中学に入る前なら少しはやったけど、最近は全然だ。
ゲーム買う余裕なかったし。
「じゃあやってみよう。何でも慣れだからさ」
そう言ってゲームを起動した。
久しぶりのゲームは楽しかった。
最初は一方的にやられていたのが、負けても半分以上削れるようになってきた。
途中、おばさんが昼食を用意してくれたのでそれをいただき、再びゲームを再開した。
それから少しして、手加減をしてもらってだが谷津君に一勝できた。
「お、やっと勝てたか」
見ていた山下君が漫画から顔を上げて言った。
「じゃあ3時になったら罰ゲーム付きでやるか」
谷津君がニヤニヤしながら言う。
「それまで練習させてやるよ」
山下君がまた漫画を読み始める。
残り30分弱。
僕は罰ゲームが何かは分からなかったが勝てるよう練習した。
そして、時間は3時になった。
「じゃあ、始める前に罰ゲーム決めるか」
そういうと、山下君がメモ用紙を取り出し、それを一枚ずつ配った。
「とりあえず書けよ。何でもいいからさ」
そう言われ、何て書こうか迷った。
何でもっては言われたけど、何がいいかな…?
困った僕は、無難に腕立て10回って書いておいた。
「じゃあ、1と2が俺、3と4が隆文、5と6が中澤な」
山下君が紙を回収し、机からサイコロを取り出した。
罰ゲームはサイコロで決めるのか。