ありがとうございます。
「週末、家に誰もいなくなるからさ。俺ン家でしようよ!みんなでシコれば怖くない的な?」
谷津君が笑う。
僕には『シコる』と言う単語の意味が分からなかった。
「さすがにそれは…」
山下君も渋る。
「泰明も恥ずかしいとかあるんだ」
「当たり前だろ!」
「デカチン見せつけたらいいじゃん」
「デカくねぇし」
顔を少し赤くする山下君。
「あ、あのさ…。シコるって、何?」
意を決して、さっき疑問に思ったことを訊いた。
「え?」
二人が僕の顔を見る。
「オナニーは?」
「わかんない」
エッチなことだとは何となく知っているが、それとシコるの関連性や方法は分からなかった。
今度は二人が顔を見合わせた。
そんなに変なことを言ったのだろうか。
「よーし!性教育の時間だ!」
谷津君が急に張り切りだした。
「泰明、お前がモデルになれ」
「はぁ!?」
「だから、お前がシコって中澤にオナニー教えてやれよ。俺が解説するから」
「自分でやれよ。お前は恥ずかしくないだろ?」
後から聞いた話だが、谷津君は山下君の家に泊まりに来たり、山下君が泊まりに行くたびに布団の中や、時には山下君に背を向けた状態でオナニーをしていたそうだ。
「えー。しゃーないなぁ…」
ベルトを外し、ズボンを脱ぐ谷津君。
「馬鹿!本当にするなって!」
山下君が止める。
僕の中では見たい欲望とダメだという理性がせめぎ合っていた。
「本当は見たいんだろ?」
「見たくねぇし!」
山下君が反論しているが、見たくもあるんだろうって感じが何となく伝わってきた。
「中澤も困るよな?」
「ぅ、ぅん」
一応山下君に合わせた。
「…そっか。わかった」
谷津君はテンションが一気に下がった様子でズボンを穿き直した。
「時間が遅いから帰るわ」
つまらなさそうに荷物を持って部屋を出て行く谷津君。
そのまま帰って行ったようだ。
「なんだあいつ…」
山下君が怒ったように呟く。
「わりぃな。隆文ってエロいことばっかり考えてるからさ」
「大丈夫だよ。僕もちょっとは興味あるし」
「男だもんな。てか、本当にシコったことないの?」
笑いながら訊いてきた。
「オナニーとシコるっては一緒なの?」
質問をさらに質問で返す。
「一緒だよ」
「したことないよ」
「朝起きたらパンツ汚れてたってことないか?」
今度は山下君の性教育の時間が始まった。
続く。