小5の時、親が離婚して父に引き取られた。
そして、その1年後。
父は職場の人と再婚した。
新しく母親になった人もいい人で、人見知りな僕でもすぐに話せるようになった。
だが、義母の連れ子である省吾君は、あまり話してくれなかった。
2つ年上の中2だが、そのわりには落ち着いていた。
反抗期というわけではないらしく、言うことはちゃんと聞いてくれた。
ある日だった。
母は実家に帰る用事が出来てしまい、父も出張でいない。
5日間、省吾君と2人だけになることになったのだ。
学校が終わり、家に着いた僕は、何となく寂しい気持ちになった。
母は仕事を辞めたため、ずっと家にいた。
1人になることはなかった。
なのに、今は1人だ。
離婚した時を思い出す。
寂しくていつも泣いていた。
僕は広すぎる家にいたくなくて、家を出て省吾君の学校の方へ歩き出した。
学校まで着いたが省吾君には合わなかった。
校門から生徒が出て行く。
入れ違いになったのかも知れない。
どうしようかと途方に暮れていると、先生らしき男の人が近付いてきた。
「どうしたの?」
「あ、あの…」
人見知りな僕は頭が真っ白になってしまった。
「誰かの弟さんかな?」
「あ、ぇ、えと…に、2年5組の、吉田省吾の…弟です」
心臓がバクバク鳴ってる。
「あぁ、省吾のか。弟ができたって言ってたけど君のことなのか」
言ってた?
僕のこと、話してるんだ…。
「俺、省吾の担任の佐藤って言います」
「省吾の弟の優斗です」
「省吾、今日は図書当番だった気がするんだよなぁ…。行ってみるか」
手を差し出され、僕はその手を掴んだ。
皆が僕を見る。
あとで考えたら当たり前のことなのだが、その時は怖くて仕方がなかった。
手を引かれ、昇降口で来客用のスリッパを借り、事務室で名前と来た時間を書き、図書室に案内された。
図書室に入ると、省吾君が友達と楽しそうに笑っていた。
家じゃあまり見ない顔だった。
「省吾、お客さんだ」
「え?」
省吾がこっちを見る。
「お前、何してんの?てか、どうした?」
省吾君が近付いてくる。
僕は生き別れになった兄弟に会ったかのような勢いで省吾君に抱きついた。
「なに?1人で留守番もできないの?」
そう言いながらも、優しく頭を撫でてくれる。
ちなみに、省吾君は170前後。
僕が135前後。
かなりの身長差があった。