「お兄さん、こういうとこ初めて?よく来るの?」
部屋に入るなり、太った男は時彦を鏡の前に立たせると、胸を触りながら尋ねる。金髪はコンドームを取りに、一旦部屋を出ていた。
「いえ、初めてです。今日は命令で……」
「命令ってなに?お兄さんそういう趣味?いるんだ、ご主人様が?」
「は、い。皆さんに使ってもらひっ!?」
不意に乳首を摘ままれ、語尾が跳ね上がる。太った男は時彦の反応を面白がってか、両手を上げさせてから胸の先端を摘まみ、なぞり、捏ね回す。
「ん、んぅっ!」
時彦は男のなぶるような愛撫に、思わず喘ぎを漏らしてしまう。
「楽しんでんなぁ」
いつの間に戻っていたのか、金髪が苦笑しながら二人を見ていた。
「この子、何か命令で来たらしいですよ」
「命令?ああ、掲示板で書き込みあった若ウケって、君?」
太った男の言葉に、金髪はリストバンドを見ながら時彦に尋ねる。彼もあのサイトの利用者だったらしい。
「そ、うっ、です」
時彦が頷くと、金髪は鼻で笑いながら、太った男を手招きする。男は怪訝な顔をしながら時彦から離れ、金髪の隣へ行く。時彦は荒い息をつきながら、二人の方へと向き直る。金髪と太った男は時彦の身体を品定めするように眺めている。
「じゃあさ、命令手伝ってあげるよ。だから、なんて命令されたか、自分で言ってみ?」
身振り手振りも交えてね、と金髪が嗜虐的に笑いかける。身振り手振り、その意味するところを察して、時彦の心臓が、強く脈打った。
「僕の……」
存在しない主人からの命令を思い描きながら、時彦は二人に背を向け、マットレスの上に四つん這いになる。
「ご主人様の命令は、僕のケツマンコや口を、性欲処理に、使って、貰うことです」
一言ごとに時彦の興奮が掻き立てられる。既に緩く勃起したペニスからは、新たな滴が滴り始めていた。
そして、時彦は二人にアナルを見せつけるよう、臀部の谷間を指で押し広げると、腰を突き上げて哀願した。
「どうぞ、僕のケツマンコを、ここにいる皆さんで……可愛がってください」
羞恥心で顔が熱い。羞恥だけではない。これから受ける、自ら望んだ辱めへの期待に、体が火照った。
「本当に変態だよ、君」
笑う金髪の傍らで、太った男の鼻息が荒くなった。今のが余程利いたらしく、彼のペニスは脈打つたびに上下に振れる。
金髪は太った男にもコンドームを渡すと、ローションのボトルを手に取って、時彦の後ろに屈み込んだ。
「もう洗ってあんでしょ?悪いけどスカはここ禁止だから」
「大丈、夫です。ちゃんと、してきました」
「いい子だ」
「うあぁっ!?」
確認が終わると、金髪は時彦の尻に顔を埋めた。途端に、時彦のアナルを冷たく蠢く何かが分け入る。
窄まりを抵抗なく解きほぐすと、金髪の舌は瓶の奥の蜜をねだる様に舐め回し、啜り上げ、這いずり回った。
「ふああ、あ、あっ!」
金髪の愛撫に膝を震わせていると、頭を鷲掴みにするものがいる。目の前には、独特に折れ曲がった蛇のようなペニスが突き出されている。
「俺のもしてよ、肉便器くん」
「は、ふぁい」
太った男のペニスを、時彦は舌を突き出して迎え入れる。熱く脈打つそれは、喉の奥まで挿し込まれる。
「ああ、いいねぇ」
「んぐ、ぐ、げぇっ」
えづく時彦を気遣ってか、太った男はゆっくりと腰を引く。そして時彦が息を整えたのを見計らって、再び腰を推し進めてくる。
「ん、ふぅ、んちゅ、んん」
目の前の男の足に手を付き、哺乳瓶にむしゃぶりつく乳児のように、時彦はそれをくわえ込む。
熱い脈動を口の奥に感じながら、亀頭、雁首、裏筋と舌の腹で舐め上げ、口をすぼめて吸い付く。
具合がいいのか、男は腰を動かさず、時彦の頭を持ってオナホでも使うように前後させる。
「んっ、んっ、んっ」
「いいぞ、鏡見てごらん。自分が今どんな顔して、何やってる?」
男に促されて、横目で鏡を見る。頬をへこませ、潤んだ目でペニスをくわえる時彦の顔が、そこにあった。
「そろそろこっちもいいかな」
今まで丹念に解きほぐしていた金髪がようやく顔を上げた。時彦は、アナルがぱくぱくと口を開き、腸内が外気に晒されているのを感じた。しかし、それはすぐに塞がれることになる。
「ほぉら、お待ちかねのチンポだぞ。欲しい時はなんて言うんだ?」
金髪がせせら笑うように問い掛ける。同時に、無遠慮に指を差し込み、内側を確かめるように弄り始める。
「んひっ!?」
前立腺を触れられたのか、ペニスを抜かれた口から悲鳴が出る。にも関わらず、金髪は指を止めない。
「早く言えよ。倶楽部にいる全員に聞こえるぐらい大きく!」
「は、ぁいっ!私のっ、ケツマン、コにぃっ、みんなのおちんぽ、突っ込んでください!僕にっ、ザーメンくださ、いぃっ!」
「上出来だ」
引き抜かれた指の代わりに、アナルへ熱い塊が押し当てられ、時彦は身震いする。ゆっくりと、だが今まで受け入れたことのない太さが、時彦のアナルを蹂躙する。すかさず、口にも太った男のペニスが捩じ込まれる。
「んん、んぶ、あむ、んーっ!?」
「おお、遊んでるかと思ったけど、よく締まるわ。お望み通り、ガンガン犯してやるからな」
根元まで挿し込まれた頃、金髪が軽い感嘆の声をあげる。引き締まった臀部を撫でながら笑っているが、時彦は体内に挿入された肉杭の圧倒的な質量に、フェラも止めて打ち震えたいた。
(内臓が、押し上げられてるみたいだ)
金髪が動くたびに冷や汗が吹き出し、鳥肌が立つ。みっちりと押し込められ、動く余地などないように思われたが、彼がローションを塗していたのか、ぬちぬちと音を鳴らして肉杭が動く。
「んっ、んっ、んっ、んふっ、んっ」
「おほっ、いい感じっすね。ほらほら、口もちゃんと動かす動かす!」
腰を掴み、金髪のピストンに合わせて息が漏れる。太った男も、興が乗ったらしく、金髪に合わせて時彦の頭を前後させる。
アナルを突き抜かれると、口から引き抜かれる。喉奥に差し込まれると、直腸を引きずり出される。両方が空いたかと思えば、次の瞬間には時彦を貫くように前後から叩き込まれる。
「んぐ、ふっ、ぐげっ、がっ、んんっ!」
「いいぞこのケツマンコ!久々に当たりだぞお前!」
「綺麗な身体してとんだ変態だ、最高だよ」
アナルを貫かれる悦び。吸い込むたびにむせるような雄の匂い。突き込まれる度に感じる、痺れるようなペニスへの快楽。今までにない刺激に身を委ねながら、時彦は鏡を見た。
(ああ、これって……)
激しいピストンに揺れる目に映ったのは、思い描いていたような、組み敷かれる自分の姿だ。両腕を手綱のように金髪に掴まれ、太った男は玩具のように頭へ腰を打ち付ける。赤い照明の下で、引き締まった体が身を捩って快感を貪っている。
「ああ、イくぞイくぞイくぞ!ケツ締めろ!」
「ううっ!」
先に金髪が達した。腰の奥で何かが戦慄き、そして温いものが広がっていく。次いで、それが何かを確かめる間もなく、時彦の顔面に降り注ぐものがあった。精液、と気づいた時には、額に押し当てられた男のペニスから、だくだくと溢れ出る熱いものを、擦り付けられた。
「っふう……」
「あー、たっぷり出たー」
男達が、満足気な溜息をついて時彦から離れる。手を離された瞬間、時彦は無様に崩れ落ちる。
ちょうど練習で全力を尽くした時のように、内股が痙攣していた。腰だけを突き上げ、猫の伸びのような姿勢で、時彦は呆然としていた。
鏡に映るのは、男たちの間で打ち捨てられたように痙攣する自分の姿。足元にはピストンのあまり押し出された自分のものか、はたまた胎内に吐き出され、溢れ出てきた金髪のものかも判らぬ、白濁の水溜り。顔には、黄色みがかった精液の流れが、隈取のようにへばりついている。
そのうちの一筋、口元に垂れてきたそれを、舌を伸ばして舐めとる。
塩辛いような、カルキめいたそれを味わいながら、体を持ち上げる。
「やー、いい感じだったわ」
「良かったよ」
振り返ると、自分のペニスをティッシュで拭う二人が笑っていた。そして、その後ろには、また新しい人影が並んでいる。
「さっきの聞こえたんで来たんだけども、俺も混じっていいかい?」
その中の一人が時彦の方に声をかける。見れば、彼もその奥の男も、そそり立ったペニスを隠そうともしない。
「……はい」
時彦は男達の方へ向き直ると、足を開いて笑顔で頷いた。
「はい、ありがとうございました」
結局、あの後を合わせて、6人から10回近い射精を受けた。直接相手をしなかったものを含めれば、もっと多い。
コートを走るための筋肉は、男の上で腰を振るために使われ、号令を飛ばす口は精液の受け皿にされた。体格のいい男に抱かれ、仰け反った状態で口を犯され、その様を見てギャラリー達が自らのペニスを扱き、引き締まった時彦の身体めがけて、好き勝手に放っていく。
最後に時彦自身が、突き上げられた勢いで精を吹き出して、この日は終わった。最後には、丸められたティッシュと、使用済みのコンドームが辺りに散っていた。
それらを片付け、念入りにシャワーを浴びてから、レンタルのタオルと褌を受付で返し、時彦は倶楽部を出る。
ビルを出て、駅に向かう道すがら、時彦は下半身に残る余韻を噛み締める。
それは、帰りの電車に乗ってからも、家に着いてからも後を引いた。まるで、今もアナルを犯されているようだ。
眠る前に、ふと思い立ってポータルの掲示板を覗く。時彦が立てたトピックには、既に幾つかのコメントが返っていた。
それらを見ながら、時彦は次の訪問をぼんやりと考え始めていた。