俺は高卒後、働いて一人暮らしをしていたが、上司と馬が合わなかったのが理由で仕事を辞めた。
だが、帰るのも格好悪くて、バイトを掛け持ちして食っていた。
仕事が嫌いじゃなかったし、バイト先で飯出るしで、先輩に奢ってもらえるしで、休みが少ないこの生活にも満足していた。
それから20歳を迎え、年が明けての成人式。
久しぶりに帰った地元は変わっていなかった。
スーツを着て会場に向かえば懐かしい顔触れ。
中学の頃の仲間達。
クラスや部活が一緒だった奴らと盛り上がった。
そして、一番会いたかった奴は遅れてきた。
「裕貴、久しぶり」
「おう。久しぶり」
裕貴は一番の親友で、俺がずっと片思いしていた奴だ。
そして、修学旅行の時に一度だけ扱き合った仲でもあった。
「一人暮らしはどうだ?仕事辞めて食えてるのか?」
「バイトで何とかね。裕貴はどうなの?」
「今は一人暮らし。つっても、家継がなきゃだから近いんだけどな」
裕貴の実家は裕貴の父ちゃんが経営している工場だ。
じいちゃんの代から続いていて、片手間でアパートの大家までやっている、近所じゃ有名な家だ。
「じゃあ工場で働いてんの?」
「あぁ。毎日肉体労働でツラいわ」
言われてみれば、どことなく顔つきが男らしくなっている気がした。
それから成人式の後に同窓会をした。
バカみたいに酒を飲み、騒いだ。
そのせいで終電を逃してしまい、俺は帰る手段を失った。
どうしようかと思っていると「俺ん家来いよ」と、裕貴が誘ってくれた。
フラフラと2人で歩いた。
裕貴は酒に強いのか、俺が転びそうになるたびに支えてくれるぐらいしっかりしていた。
「飲み過ぎ」
「気持ち悪くはならないだけマシだろ?」
そんなことを言いながら歩いていると小綺麗なアパートに着いた。
二階に上がり、真ん中の部屋の鍵を開ける。
「ほら、入れ」
「お邪魔しまーす」
中は片付けられており、一人暮らしとは思えないくらい綺麗だ。
「便所借りていい?」
「あぁ、そこだから」
「ありがと」
汚さぬように座って用を足し、便所から出ると、裕貴が着替えていた。
男らしく逞しい体。
腹筋や腕なんかアスリートのようだ。
「ジャージ貸すから着替えろ」
「ありがと」
意識しないようにしてスーツとワイシャツを脱ぎ、下着も脱いだ。
それから下を脱ごうとしたら、ふらついて倒れてしまった。