2学期の中間考査が終わった後のことです。
その日僕は日直で、放課後の教室で一人学級日誌を書いていました。
そこへヨコタくんがやってきました。
サッカーのユニフォームではなく、制服を着ていたので、「あれ、今日は部活しないの?」とたずねました。ヨコタくんは「うん、今日は休み」とだけ答えて帰り支度をします。
僕は「一言だけだけど、ヨコタくんと会話ができてラッキー」と思っていました。
すると、かばんを持ったヨコタくんが僕の席まできて、「あのさぁ」と話しかけてきます。
「あのさぁ、なーちゃん(僕は「ナカムラ」という苗字なので、「なーちゃん」と
いうあだ名でした)ってE.S.S.やから、英語得意なんやろ?」
「いや、英語は好きやけど、そんなに得意でもないよ」
「そうなん?おれ、英語苦手で、今回のテストも点数良くなかったし、どんな風に勉強したらええんやろ?」
「やっぱ教科書何度も声に出して読んだらいいんちゃう。あと、テスト直しするとか」
「期末考査も悪かったら、部活やめ、って親から言われてるから、ピンチやねん」
「そうなんや」
「今度、一緒に勉強してくれへん?」
思いがけないヨコタくんからの申し入れに、僕は即座に「ええよ」と答えました。