僕、ユウセイ、21歳。僕は都内で大学に通う傍ら、メンズ脱毛サロンで施術スタッフとしてバイトしている。ちなみに、僕は高2で自分のセクシュアリティを自覚したが、恋人はいたことはないし、周りにもカミングアウトはしていなかった。それゆえに童貞。うちのサロンは脱毛とメンズ美容、マッサージを提供している。施術室が2部屋、スタッフが3人いる。お客さんの中にはゲイの方もいる。お店には内緒で、body to bodyの裏メニューを1万円で提供している。自分は勃起しても射精はしないが、お客さんを抜いてあげることはある。でもうちは一般向けのサロンだから、お客さんのほとんどはノンケさんだ。その中で、忘れられない出会いがあった。
今年の3月、HPからケンさんという新規のお客さんからヒゲ脱毛の予約が入った。予約時間を10分過ぎた頃、チャイムが鳴り、スーツ姿のケンさんが現れた。身長180cmくらいの細マッチョ。吉沢亮に似た雰囲気に、思わず「タイプだ」と声に出そうになった。危ない、危ない。
まず席に案内し、カルテを書いてもらいながら軽い雑談を始めた。ケンさんは31歳で、港区の外資系銀行に勤めているという。見た目は20代にしか見えないのに、話し方や仕草は大人っぽくて、ただただカッコいい。意外にも脱毛は初めてらしい。
新規のケンさんは、なぜか僕を指名してくれた。スタッフは他に3人いるのに。 カウンセリングを終え、施術室へ案内する。室内着に着替えてもらい、ベッドに横になってもらうと、いよいよ施術開始だ。肌の状態を確認する。普段は事務的な作業だけど、至近距離で見るケンさんの顔は、本当に見惚れるほどだった。肌はきめ細かく、パーツ一つ一つが完璧に整っている。「この人、めちゃくちゃモテるだろうな」と、ぼんやり思った。 雑談の延長で、それとなく「彼女さんは?」と尋ねてみた。すると「半同棲中です」と、あっさりした返事。脱毛の動機も、彼女からの要望らしい。「なんだ、やっぱりそうか」。こんなイケメンで仕事もできる人が、独り身なわけないよな。少し残念な気持ちが、胸の奥で小さく沈んだ。