下山した後、コンビニ弁当を頬張ると、隼がコーヒーを淹れてくれた。
さすがは元料理人卵、アウトドアグッズを巧みに操り上手に作ってくれる。
翔は嗚咽をしながらも何とか弁当を胃に入れる事はできた様だ。
3回目の登頂は、隼と2人で行く事にした。
翔は多少悔しそうではあったが、体力の限界だったのか、車内で待機することを受け入れた。
3回目の登頂は荷が多かったにも関わらず、前の2回よりも早く登頂できた。
「翔を放って僕ら2人でした方が早く終わったりして。」などと隼が軽口を叩く。
『翔を1人で登らせでもして遭難なんてしてしまったらどうするんだ?』
「それはそうですけど、翔の荷物は勇人さんが持って、翔は登って降りただけだし。それに遅いし。」
『え?俺に荷物を持たせた上に背負ってもらって下山した人のセリフ?』と、笑いながら聞くと
「あ、そうだった。人のこと言えませんね。」
と申し訳なさそうに誤魔化した。
「そうですよね。今度は僕が助けてあげないと…。」
こういう切り替えの早いところが隼の良い所だ。
ある程度骨組みを組み立てた所で日が傾き始めたので、今日の作業は終了した。
下山しながら、隼に就学の意思の有無を聞いた。
今後、社会に出ることを想定すると、いかなる理由があれども中卒では不便だろうと思ったからだ。
隼はそんな事は考えていないと即答したが、真剣に考えてみろと言うと困った表情で「はい」と答えた。