しんじさんのマンションを後にしたのは22時くらいだった。ケイタくんには遅くなるかもしれないから先に寝てていいよとLINEをしておいた。
家に帰ると玄関近くのケイタくんの部屋の電気は消えてるようだった。もう寝たか…今日は警察にも行って疲れたんだろうなと思ってリビングに行くと、テーブルにメモが置いてあった。
ハンバーグを作って冷蔵庫に入れてます
と書いてあった。冷蔵庫を開けるとラップをしたハンバーグがあった。美味しそうだ。僕はお腹は空いてなかったけど、ケイタくんが僕のために手作りしてくれたんだと思うと、すぐに食べたくてチンして食べた。
美味しい。若い子が好きそうなちょっと濃い味で…なんだか新鮮だ。しんじさんはおにぎりばかりで、自分も最近は味付けが薄い物ばかり食べる傾向にある。やっぱり誰かと一緒に暮らすっていうのは…とても新鮮だなと思った。
次の日、久しぶりにケイタくんと一緒に散歩に出た。
「クリスマスの日にジンさんと一緒にいたら良かったなって後悔してます」
ケイタくんは少し寂しそうに呟いた。僕も同じ気持ちだ。あの時に無理にでも食事に誘っておけば、その後に連絡を取り合っていれば…ケイタくんには彼氏がもういる。その事実だけで僕は勝手に打ちひしがれて、ケイタくんに連絡を取ることもいけないんだと思って、ケイタくんのとの記憶を封印した。
今思うと、いい大人が、若い子の恋愛に一喜一憂して情けない。大人の余裕ってやつを見せつけたら良かったんだ。
何をあの時に強がる必要があったんだろう。心の奥底ではケイタくんの事を心配してた。ずっと会いたいと思っていたのに。なんで、再会できた時にそれが言えなかったのか…もし、あの時にケイタくんを引き留めて一緒にいる事ができていたら、こんな事にはなってなかったんじゃないだろうか。
そんな事を考えながら、夏の夕暮れを2人で散歩した。