次の日、僕は仕事を休んだ。
弁護士先生の事務所にケイタくんと一緒に出かけた。示談を成立させて、なんとかして不起訴に持っていきたいという事で正式に依頼した。
幸いにもケイタくんがした事は被害者はいるけど、微罪で、相手方と示談ができたら不起訴にできるはずと先生も言ってくれた。示談金は相手の言い値でもいい。とにかく、ケイタくんの人生を終わらせてはいけないと思った。
事務所を後にしての帰り道。ケイタくんは自分の考えが未熟だった事の反省を口にした。
前科がつくという事がどんな事なのか、昨日の夜に自分なりに調べたそうだ。浅はかだったと自分を恥じているようだ。
『ケイタくん、今回の事でまた少し大人になったね。人生は日々勉強だから、知らなかった事をどうこう思う必要なんてないよ』
「はい」
ケイタくんは相変わらず可愛い。23歳とは思えないくらいあどけなさがある。それは危うい幼さみたいなものでもあるのかもしれない。
俺が守ってあげないといけない。この気持ちはなんなんだろう。
僕は夜から仕事で人と会うからと、ケイタくんを先に家に帰らせた。
しんじさんに会わないといけない。
しんじさんには事前に伝えていた。今日会って話がしたいと。
予定の時刻にマンションに行くと、マンション前でタクシーから降りるしんじさんが見えた。自分のためにタクシーで急いで帰ってきてくれたのか。
細身のスーツにコツコツ鳴る革靴がおしゃれで格好いい。若い子から見たら、おじさんじゃないか?と思うかもしれないけど、僕にはやっぱりイケメンのシゴデキリーマンだ。
某知事に似ていると書いたが、スーツをビシッとキメたしんじさんは007のダニエル・クレイグに似ている気もする。
こうやって書いててもわかる。僕はしんじさんの事が大好きだ。恋してる。付き合いたいと思うし、彼とこれからの人生を一緒に歩むことができたらと思っている。
ゲイの出会い系アプリで出会ってSEXをする関係だけの人に何を思っているのか…しかも、40手前のおっさんが44歳に対して…そう思うかもしれないけど、実際にこの年齢になってみたらわかると思う。
この年になると出会いだけでも難しい。そこから恋人関係になる人を見つけるなんて至難の技だ。なんなら、アプリでメッセージをやり取りするだけでもしんどいくらいだ。
相手が気に入らないと思ったら即切られる。そんな薄氷の上を歩くが如くの会話に何の意味があるのか…
そんな中で見つけた体の相性も、会話も、趣味も合う人に惚れてしまうのは無理もないだろう。
そんなせっかくの出会いだったのに、僕はなんでこんな事をしているんだろう。