無水カレーが一時期流行ってレシピは知っていたけど、なかなかの手間だった。パパっとできると思っていたが…その分確かに美味しかった。
ケイタくんも美味しいと言ってくれた。
ケイタくんとの再会後初めての夕食はカレーだ。この家で再度食事をする機会があればカレーにしようと僕は密かに決めていた。
「この家に初めて来た日も、ここに座ってカレーを食べた気がします」
ケイタくんに少し笑みが戻った。少し言い争いをしたが、お互いの意見は平行線だった。とりあえず、晩御飯にしようと言いカレーを作った。
ケイタくんは元の自分の部屋を見に行って、まだそのままであることに少し驚いていた。ラグとか布団はケイタくんと同棲していた頃のままにしていたからだ。
片付けるのが面倒だったと説明したが、本当は処分できなかった…ここにケイタくんがいたんだという何かが欲しかったからかもしれない。
やっぱり美味しい食事は人間に活力を与えてくれるのかもしれない。だいぶケイタくんも落ち着いてきて、お風呂を勧めると一緒に入ろうと冗談を言うくらいだ。
『明日、ケイタくんの家に服とかを取りに行こう…今日は僕ので悪いけど、これを使ってね』と替えのパンツを置く。タオルとパンツを置いて洗面所を出ようとする僕に、ケイタくんが後ろから抱きついてきた。
「一緒に入ろうって言ったじゃないですか…」
『どうしたの?』僕は笑いながらケイタくんの方を向いた。
ケイタくんは少し涙ぐんでいるようにも見える。「一緒にお風呂入りましょう」正面から抱きついてくる裸のケイタくんに…僕はドキドキしていた。
あっ…
『わかった、ちょっと待ってて…僕も替えの下着とバスタオル持ってくるから』そう言ってケイタくんを引き剥がした。
僕は急いで洗面所を出て、離れた自分の部屋に向かった。その間もずっとお尻のポケットに入れたスマホのバイブの振動が伝わってくる。
『もしもし…』
【もう家?俺今さっき仕事終わったとこなんだけど…まだご飯食べてなかったら一緒に何か食べに行かない?】
『すみません、さっきカレーを食べてしまって…』
【ジンくんまたカレー作ったの?好きだね(笑)いいよ、また今度行こう。ごめんね急に電話して。でも、声聞けて良かった】
『ありがとう、しんじさんもお疲れ様…またご飯行きましょう』
【うん、ジンくん、おやすみ】
僕はスマホを机に置いて、急いで押入れからパンツを出して、タオルを持って洗面所に向かった。