『この家も久しぶりでしょ?』
『キッチンもいろいろと増やして、あれから料理の腕も上がったんだよ』
『今日はケイタくんが来るから、アイスはハーゲンダッツにしたんだよ』
ケイタくんはダイニングテーブルのイスに腰掛けて泣いていた。
ケイタくんが家に来てから1時間ほどが経過した。そろそろ落ち着いてきたのか、ケイタくんが顔を上げてくれた。
「ジンさん…本当にごめんなさい」
ハーゲンダッツの抹茶とバニラどっちがいい?と僕が聞くとケイタくんは抹茶を選んだ。僕も抹茶が食べたかった…が仕方ない。
アイスを食べたケイタくんはポツポツとだけど、僕と再会後に何があったかを話してくれた。そして今の状況と今回何があったのかを教えてくれた。
そして、最後に「本当に迷惑をおかけしました…ジンさんが困った時は最後の最後に自分に連絡してこいって言ってたのを思い出して…」と言って頭を下げた。
『こんな形でケイタくんに再会したくなかったな』僕の本心だ。
「ごめんなさい…」
『でも、頼ってくれたのは、ちょっとだけ嬉しいよ』
『そしたら、後は僕と弁護士先生に任せて、ケイタくんはここでしっかり反省しなさい』
僕は少し笑って冗談めいた感じでケイタくんに言った。これで、緊張も少し解れると思ったけど…彼の心境はそうではなかった。
「いえ、これ以上はジンさんに迷惑かけれないです…」
『何かアテはあるの?』
「アテ?」
『弁護士さんにお願いしないと示談とか…』
「弁護士なんてお願いできないし、示談もしないです…僕はもうこれで罰を受けるなら受けて、刑務所行くなら行きます…」
『ケイタくん、ここで示談しないと前科がつくんだよ?』
「いいです…自分でしたことなんで、自分で責任を取ります」
『ケイタくん…いろんなことがあって辛いかもしれないけど…少し冷静になって…』
「僕は冷静です!!いろんなことがあってって………ジンさんに何がわかるんですか?」
ケイタくんの口調が少し強くなる。
『ごめん、だけど、でも、僕はケイタくんに前科がつくのは嫌だから…』
「もういいじゃないですか…身元引き受けだけで…本当に大丈夫なんで」
しばらく沈黙が続いてから「帰ります」とケイタくんが呟いた。
『いや、帰れないよ…ケイタくんの身元引き受け時に同居して君を近くで見ておくって約束してるんだから』
「だったら警察に戻ります!!これ以上はジンさんに僕のこんな姿見せられないし、迷惑もかけたくない」
僕はケイタくんをそっと抱きしめた。