第一声に驚いたが、助手席の隼を見ると、怒りとも悲しみとも取れる眼差しで私を真っ直ぐに見つめていた。
『したよ。』
…少し間を置いて…
「最後までですか?」
『最後までしたよ。』
俯きながら両手を強く握り合っている。
「イッたんですよね。」
『イけたよ。翔の中で果てた。』
「気持ちよかったんですね、良かった。」
それから山口県に入るまで、隼は俯いたまま固まった様に動かなかった。
「勇人さん」
突然の発声にビクッとしたが、冷静を装って運転を続けた。
『隼、何だい?』
「勇人さんは僕じゃなくて翔の方がタイプなんですか?」
『何でそんな話になるんだ?』
「僕が邪魔者なら、いない方が良いのかなと思って。」
変な方向に話が向かい始めたので、朝のことを隼に話をした。
「そっか…僕が翔を悩ませていたんですね。」
『そう、隼は楽しんでいたのに、何故か被害者みたいな口調で翔のことを睨んだりするのは、お門違いだと思うよ?』
「え?睨んだりしてないですよ。」
『本当?』
「でもイラっとしていたし、手伝ったりもしなかったし、車に乗ってすぐに寝たのも少しイラついてたかもです。」
『隼は正直だね。でもだからこそ、翔の事をわかってあげようよ。』
「はい、そうですね。」
頷きながら、また静寂の時が訪れた。