どこかの小さな家かと思ったら、連れていかれたのは立派な塀で囲われた、旧家の邸宅といった感じの豪邸だった。門もどこかの寺みたいにデカい。
「え、ほんとに誰もいないの?」
面食らって、思わずそう聞いてしまう。
「うん。マジで俺ひとりだから遠慮しないで」
そう言って玄関に案内される。
たしかに家のなかは奥の部屋のひとつに電気がついてるだけで真っ暗だ。
旅館みたいな廊下を歩いてそこに入ると、床の間のようなところに布団が敷いてある。あらためて準備したような敷き方ではなくて、ついさっきまでシュンが寝転がっていたような感じだ。
座って待っててと言われたので布団の上にいると、シュンが台所のほうから、どっち飲む?と言いながらコーラとお茶のペットボトルを持ってきた。
コーラを受け取ると、シュンも布団の上に腰を下ろす。
真近で見ると本当に彫刻のように顔が整っているし、まつ毛も長い。シャツからのぞく鎖骨もきれいな形をしている。若々しいハリのある肌がうらやましいくらいだ。
ペットボトルを飲みながらしばらく話をする。
この家はもともとシュンの祖父母の家だったけど、2人が亡くなって空き家になり荒れかけてきたんで、シュンが管理を兼ねて住むようになったらしい。職場まで遠いし、広すぎて困っているそうだ。
「あ、忘れてた」
そう言いながら、シュンが雨戸を閉めに立つ。
「こないだ、ここ閉め忘れたままセックスしちゃってさ
。こっち側は山だから覗かれてはないと思うけど」
「それは男と?」
「うん。俺ゲイだから」
「どんな相手だった?」
「県庁所在地にある大学の男。ここじゃ遊べないから、週末はよくそっちのほうに行ってるんだよ」
「そりゃ出ていくの大変だろうな」
「車ならすぐだけどね。でも久々だからめっちゃ声出しちゃった」
「シュンくんが?」
「そうだよ。タチしたこともあるけど、イケメン相手にはウケだからね」
ペットボトルを置いたシュンは俺に体を寄せてきた。若い肌の匂いが漂ってくる。
「KOさんはアプリにタチって書いてたよね」
「うん」
「KOさんマジかっこいいすよね。、、、いい?」
そう言いながら、シュンは唇を重ねてきた。俺もシュンを抱き寄せて、お互いの舌を絡めた。
(続く)