決していいマンションとは言えない雰囲気で、お兄さんの部屋の玄関からエレベーターまでの道のりはビックリするほど暗い。
エレベーター前ですら不自然なほど暗くていつも少し怖いなと思っていた。
そこに立ちすくむ人影を見た瞬間心臓が飛び出るほど驚いた。
「俺にもしてくれない?」そんな第一声を理解するのに少し時間がかかった。
《え、何?今この人何て言ったの?》
《こんな暗闇に佇んで一体何者?ここで何してるんだ?俺にもしてって何?》
「は?えっ、えっと、なんですか?」そう言う事しかできなかった。
まじで頭が??でさっぱりわからなかった。
するとスッと手が伸びてきて腕に触れられた。
ビックリしすぎてすぐに男の手を払いのけると「なんなんですか?!」と声を上げた。
とはいえ夜中なので声は小さめで…
「知ってるよ。あいつとSEXしてるでしょ?俺同居人」
「つーか同じ家にいるのに気付かないわけないじゃん!笑」
《うわ…まじかよ…普通にバレてんじゃないすか…イケメンお兄さん…》
《んでそのしわ寄せが僕に来るのか…》
この状況一体どうすればいいんだろうと考えていると男はなおも口を開いた。
「最初なんかこそこそやってんなーと思って覗いたら普通にヤッてるからどんな女連れ込んでんのかと思ったら男だったからビビった笑」
「しかもめっちゃ頻繁にやってるからてっきり付き合ってんのかと思ったら、フェラだけの時もあったしあいつ何もしねーしなんか金やってるみたいだし、あーなるほどって思って笑」
「あいつからいくら貰ってヤッてんの?」目的がわからないし、めっちゃ怖くてぶるぶる震えてた。
でももう誤魔化しきかなそうだと思ったので僕は正直に答える事にした。
「2?!安っ!笑」
あーなんか泣きたくなってきた。
「はい!4000円!俺にもやってよ!」
《は?今こいつ何て言った?》
「つーかあいつ2はひどすぎだろ」
「あの、どういう意味ですか?」
「倍あげるから俺にもやってよ」
「いや、あのわかってますよね?!僕男ですよ?」
「わかってるわかってる!ムラムラしてんだよねーお前らのSEXいっつも見せつけられてさ!」
《いや見せつけちゃいねーよ!》
てかあれだけ静かにやって部屋の出入りにも細心の注意を払っていたのに何の意味もなかったという事が一周回ってちょっと面白く思った。
「てゆーか男にされて平気なんですか?」
「んー多分?笑 なんか興味わいたんだよね笑」
なんて軽い男なんだとめっちゃ腹が立ったけど、立場的にこちらは激弱なので何も言えない…
「まぁまぁ行こうよ!」
と腕を掴まれてものすごい力で引っ張られる。
「えっ!行くってどこに行くんですか?!」
「家だよ!」
《いやいや!ありえないだろ!こいつの神経どうなってんの?!》
「何言ってるんですか!無理ですよ!」
「大丈夫!大丈夫!あいつ君が帰った後しばらく寝てるから絶対気づかない」
「いやいや!怖いです!無理です!」
男は僕に顔を近付けて言った。
「大丈夫だって!俺あいつと一緒に住んでんだよ?生活のサイクルも知り尽くしてるから!」
「信じてよ」
確かに一緒に住んでれば相手のことわかるようになるだろうけど、この男が終始軽い口ぶりなのが怖すぎた。
でも部活どころか運動なんかまるでしてない僕の抵抗なんかまるで無意味で玄関の前まで連れ戻された。
「じゃここでする?」
ハーフパンツの上から自分の股間を揉みながら言った。
《いやいや何言ってんだこいつ!てゆうか玄関のすぐ横の窓はイケメンお兄さんの部屋の窓だからこんなところで会話してたら聞かれちゃう!》
多分この男はこれをわかった上でここで話し始めたんだろうと思う。
「わかりました…従いますから…」
「オッケー!んじゃまぁ入ってよ!」
《だからこいつ声がデカいんだよ!》
《怖い怖い…帰りたい…》
僕はこの男もこの状況も怖すぎて逆になぜか男の腕にしがみついていた。
そして男の部屋に通されるとビックリした。
イケメンお兄さんとは全く違ってとても整理されたオシャレな部屋だったのだ。
今のところぶっ飛んだイカれ男のイメージだったけど、本当はちゃんとした人なのかな…
「なんか飲む?」
「えっ?いえ、大丈夫です…」
「まぁとりあえず水持ってくるわ!」
ドカドカと部屋を出て行った。
《だから少しは静かにしてくれよ…》にしてもいい匂いのする部屋だ。
僕は団地住まいで弟たちもいるから自分の部屋なんかなくて、こういうのすごく大人でかっこいいなって思う。
ガチャンッ!と勢いよくドアが開くと水のペットボトルを持った男が入ってきた。
「ほい」
「あ、ありがとうございます…」
「んっ」
心臓はいくらか落ち着きを取り戻し、体の震えも最初ほどではなくなった。
「あの」
「ん?」
「本当にあの人と一緒に住んでるんですか?」
「えっ?」
「いや…なんか部屋が…すごいオシャレだから…」
「ん?あーあいつが異常なんだって!笑」
「あいつ普段ちゃんとしてるのに部屋だけは昔からバカ汚いんだよね笑」
「む、昔から…」
「あー俺ら中学の同級生!」
《なるほど…友達と住んでるってのは中学の同級生とだったのか》
《でもそんな友達に男とSEXしてるとこ見られるって地獄じゃん…》
《てかイケメンお兄さん危機感薄すぎじゃぁ…》
「んじゃまぁそろそろ!」
「えっ?」
するとおもむろに寄りかかられキスされた。
それもチュッなんてもんじゃなく、最初から舌を差し込まれてでろんでろんにされた。
「んーっ!!」
時間にして1分くらい口の中を舐めまわされただろうか…
「なっ、何するんですか!」
「えっキスはダメだったん?」
「ダメって言うか、あなたノンケなんですよね?!」
「ん?ノンケって?」
《あぁ、そこからか》
「あいつとはキスしないの?」
「しません!てゆうか僕は…!」
「え?あっまじ?」
ファーストキスをいとも簡単に奪われてしまった。
初めてのキスは好きな人とと思って取っておいたのに…
それ以外はいろいろヤリまくってて言うのもなんだけど…
呆然としてると
「ごめんな?まさか初めてと思わなくて」
「あいつの上でめっちゃ腰振りまくってるからすげー慣れてるのかと」
《恥ずかしい事言うなアホ》
「あの、どうすればいいんですか?」
「フェ…フェラ…すればいいんですか?」
「あーうん!してくれんの?」
「はい」
「んじゃーよろしく!」
さすがノンケらしく瞬きする間にぱぱっと全ての服を脱ぎ捨てた。