「隼、車に戻っていろ。」
私が後ろから隼にそう告げる。
でも…とたじろむ隼に「いいから…戻っとけ。」と低い声で隼の肩を持つと後ろに投げ放った。
「すいませんね、育ててくれた恩に報いる為に、現状をお伝えする意味も込めて隼を連れて伺ったのですが、どうもご迷惑だったみたいで。
でも今のやりとりで、隼があなた方から家畜同然の扱いをされていたことがよくわかりました。
そもそも隼が家畜扱いをされた原因は親の借金と言うことでいいですか?
その借金のせいで隼はいわれなき扱いをされてきたわけですね、その借金と言うのはいくらだったんですか?」
私の生気の薄い表情と低い声色に驚いたのか、『おじさん』は小さな声で「600万」と答えた。
「600万ですか…ならば養育費も含めて700万円ほどあなたに差し上げましょう。それで隼はあなたから解放されると言うことでよろしいですか?
あと絶縁されたと言うことでしたので、これで正式に姻族関係を終了すると言うことで、私の養子にでもしようと思っていますが、何ら問題ないでしょうか?」
たじろむ『おじさん』…
終始無表情で話す私にむしろ怖がっているのかもしれない。
「あ、あぁ…。」と先ほどの勢いはどこに行ったのか、声が漏れる程度の声量で答えた。
私は翌日に来る事を伝えると、その家から去った。
2人のやり取りを車の窓越しに見ていた隼は、私が運転席に戻ると同時に「すいませんでした。」と謝罪してきた。
「隼が謝ることは何もない。でももう2度とここには戻る必要はない。わかったね。」
まだ口調の厳しい私の発言に、隼は泣きながら頷くのみであった。