午前中から登山を開始するため、コンビニでお茶のボトルとおむすびを数個ずつ購入した。
流石に総重量が自分の体重と同じくらいあるリュックは持たせられないと思い、袴や神事の道具、食料は衣類を入れているボストンバッグを空にしてそこに入れて隼のリュックは少し軽くさせた。
整備された登山道のため、山登りの初めは長い階段からだった。力強くリュックを持ち上げた隼はボストンバッグを襷掛けにした私の後を鼻息荒く付いてきた。
15分程度登ると階段から山道に変わる。しかし歩き易く整備されており昨日に比べれば比較的楽に登ることができる。
しかし階段の段階から隼は手を膝に当て押しながら逆の足を上げる様な、疲労感が伝わる登り方だった。
登山開始から1時間経過した頃、最初の社に辿り着いた。ゆっくりと登ったのは確かだが、隼は私に遅れず着いて来ることが出来ていた。
肩で息をする隼にまだまだ先は長いため休んでおく様に伝えると。私はいつもの様に神事を執り行なった。
私が再び着替え終える頃には隼の息も戻っていた。
まだリュックは背負えるのか尋ねると、「足が折れない限り渡しません。」と力強く背負い立ち上がった。
次の社までは山を2つ降りてから登らないといけない為、坂が急で体力を奪ってくる。隼は歯を喰い縛りついて来る。
1つ山を超えた辺りで休憩をとり、昼飯を摂った。
爽健美茶とおむすびなのだが、景色の良い場所で食べると何でも美味く感じるものだ。
「おいしーい」梅のおむすびを頬張りながら、隼は今日1番の笑顔を見せた。
「距離的には半分まで来ている。今日はついて来れてるね。凄いぞ?」と言うと照れて喜んだ。
「足がヤバいですけど、でも大丈夫です。」と軽く自分の右足を叩きながらそう言った。