祭祀を滞りなく執行し神殿を出ると、襖の隙間から中を除き込んでいた隼と目が合った。
「神主さんってこういう仕事だったんですね。勇人さんの仕事がよく分かりました。」と、バツが悪そうに言った。
こいつ、まだまだわかってないな…と思いながら私は普段着に着替えた。
片付けをするとあらかたの荷物を車に積んだ。
車に積んであるキャンプ用品で火を起こすと湯を沸かして少し早めの昼飯としてカップ麺を2人で食べた。
「今から下山ですか?」と聞いてくるので、「これからが本番だよ。」と話すと不思議そうな顔をした。
ものの数分で食べ終えると、ペットボトルのお茶を飲みながらブレイクしていた。
「勇人さん、さっきめっちゃ格好良かったですね。神主さんの制服なんて正月でしか見たことなかったから、しかもこんなに近くで見たことありませんでした。」と、熱弁してくる。
今から何度も見ることになるよ、と笑いながら答えると、あぁそうか、と笑っていた。
少し休んだのでじゃあ出発しようと言うと隼は車に乗り込んだ。
「違う違う、今から登山だよ。」と言うとすいません…と言いながら軽快に車から降りた。
「ここは確かに神社なんだけど、でも実は神様のいる社は本当はここじゃなくて山のもっと上の方にいらっしゃるんだ。いまから山を登って、禊をして、そして祝詞をあげて下山して、それで終わりなんだよ。
後は場所によって清掃や修理をする事もある。その費用については別でもらっている事もあるけど、多くの場合はボランティアだよ。」
感心する様に大きく頷きながら「これから本番ってそう言う事だったんですか。」と納得していた。