東京の大学に入って一番驚いたのは、地方の高校生とは生活がまるで違うことでした。まず、言葉が違いました。俺は標準語をしゃべっているつもりでしたが、イントネーションはだいたい同じでも、語尾とか語彙が明らかに違うので、自分が訛っていることを初めて知りました。次に、お金の使い方が違います。高校のころは、1か月数万円もあれば十分いい生活ができたけど、東京に来るとひどいと1日で数万円使うこともあって、お金がどんどん減っていきました。一番ショックだったのが、何だかみんな上を目指している感じがして、俺は気後れしちゃいました。俺はもともとウジウジして何も決められない性格を、クールな感じでごまかしていたんです。
俺の顔はだいぶいいほうだと思います。自覚していなかったけど、これから話すイケメンの先輩も、マッケンも、俺よりずっとカッコイイのに俺を選んでくれたし、出会い系にはまっていたときも、カッコイイ子が来たね、とみんな言ってくれました。なので、高校までのスクールカースト的には上のグループにいるんだけど、頂点に君臨することはなかったです。そういうのは無理です。ところが、東京に来るとクラスで俺は明らかに浮いてました。カーストが低い方もグループを作ってつるみだしたのに、俺だけひとりぼっちでいることが多くなりました。そうすると、俺はクールな感じが強まって、ますます人を寄せ付けない感じが強くなり、どんどん居場所を失っていきました。大学のクラスなんて語学と体育しか関係ないので、2年で取ればいいやと思って語学クラスは諦め、体育は数日の合宿で単位取得とみなされる合宿系で済ませることにしました。
でも、東京で強烈な孤独感に襲われた俺は精神的にかなり不安定になり、映画系のサークルでも負のオーラが出まくっていたみたいで、休んだ方がいいんじゃないかと心配してくれる人もいました。どうにもならなくて、秋休みのころ、授業に出るのはやめて、地元に帰ることにしました。俺は高校まで部活は水泳でしたが、子どもの頃から空手の道場にも通っていました。格闘技系って実はオタクの人が多くて、遊戯王やヴァンガードで遊ぶ人が周りにいっぱいいました。土曜日に久しぶりに地元のカードショップに顔を出すと、懐かしい顔ぶれが揃っていて、ゲームをするわけでもなく、テーブルのところでダベっていました。俺の顔をみるとみんな懐かしんでくれて、これから後輩のサトシの家でアニメをみるけど、いっしょに来るかと言われ、人の温かさに飢えていた俺は「いく」と返事しました。俺はそういう集まりにはいままで参加したことがなかったので、珍しいじゃんと言われながら、みんなで車に乗り、途中のコンビニで夕食を買って、山奥のほうにあるサトシの家につきました。
今夜のメンバーはサトシとトモ先輩と俺、もうひとりの4人です。サトシの家はお金持ちなので、子ども部屋といってもとても広く、大きなテレビとソファ、ベッドがあるような、典型的な田舎の金持ちの家部屋した。カードショップでは、俺が来る前に盛り上がってしまったらしく、今晩は「とある科学の超電磁砲」シリーズをサトシの自慢のAV機器で、一気に見ることになったそうです。