岡山につくと、マッケンはかなり大胆になりました。知り合いが誰もいない安心感なのか、普段よりベタベタしてきます。俺も悪い気はしないので、バスの席でもさりげなく体をくっつけたりしていました。マッケンがあまりにも美形なので、通りすがりの女性が振り返ってきたり、イヤらしい目でゲイカップルをみるような目つきでなめ回してくる女性二人組もいました。マッケンはそんな奴らの存在は完全に無視して、ジュースを買って欲しいとか、ソフトクリームを買って欲しいとか、デパートに入ると「先輩、奢ってくれるっていいましたよね、じゃあ、この服買ってくれませんか」なんて、完全に調子に乗っていました。
このとき、俺は「今晩、俺とマッケンは結ばれるんだな」という予感がしていました。ジュースを飲むと、マッケンはわざとよだれを入れてきて、俺に飲ませるんです。俺も、なんかドロッとしていて、え、これマッケンの唾液じゃん、とわかったのですが、大好きで超美形のマッケンの唾液なので、喜んで飲みました。完全に前戯です。ソフトクリームも、すごくイヤらしい舐め方をして、俺に見せつけてくるんです。どこでそんな舐め方覚えたんだよ、という気がしましたが、実は大きな問題がありました。まだ俺は告白も何もしていなかったのです。
そこで、街中で告白するのも何なので、喫茶店に入って話がしたい、と言いました。ただ、テーブル席がなかったのでカウンター席に隣になって座りました。ただ、俺はマッケンがゲイなのかこのときも確信を持てませんでした。いきなり「好きです」とか「付き合ってください」とかいって嫌われたらどうしようと、完全に弱気になって、どうでもいいダベリをして時間が過ぎていきました。ただ、そんな俺の理性のほうとは別に、体が動き出していました。マッケンのももに自分のももがやさしく触れるように繰り返したのです。何度も何度も繰り返すと、マッケンは何かに気付いた顔をして、もの凄く幸福そうに、俺のほうを見つめてきました。
マッケン 「コウヘイ先輩、先輩がそういう人だってわかってました」
俺 「え、そういう人って?」
マッケン 「先輩、俺のこと好きなんでしょ、初めてみたときから、俺わかってましたよ。先輩はそういう人だって」
俺 「あ、おう」
マッケン 「大好きです、先輩。愛してます。俺と付き合ってくれますか」
俺 「う、うん」
完全に後輩のリードで、告白タイムは終わりました。今から、俺とマッケンは恋人同士です。こんな幸せなことがあるんだろうか、こんな美形で頭もよくて、冗談のセンスも同じで、いるだけで幸福になるヤツと巡り会えるだけでなく、付き合っていくなんていう幸福が俺に訪れていいのだろうか? そのあとの岡山のことはぜんぜん覚えていません。予約した旅館みたいなところにたどり着いたのは、もう夕食の時間が過ぎた後でした。フロントで女将に「到着遅れて済みません、なんかつまみとビールだけ部屋に持ってきてもらえますか?」と頼んで、部屋に入りました。