俺は、匠。地方の総合病院で看護士をしている。
仕事を始めて5年。そこそこベテランだ。
この仕事は嫌いでは無いが、拘束時間の長さと、たまにやってくる夜勤シフトに飽き飽きしていた。
今日も夜勤。見回りを終えて、ナースステーションに戻ってくる。
そこには、先に見回りを終えてくつろいでいる、色白で少しだらしない体型の男性看護士が、テーブルに顔を伏せていた。隼だ。
最近の夜勤の相方は、年下看護士の隼。
年下といっても、昔からの知れた仲で、年齢差なんて俺たちの間では全く関係ない。
匠「ただいまー」
隼「おかえりー」
気の置けない隼との夜勤は、全く苦にならない。
寝たり、お菓子をつまんだり、時にはたわいもないことを話したりして過ごしている。
「匠はさ、最近どうなの?好きな人とかいないん?」
彼が言う好きな人とは、もちろん男の事だ。
昔からの仲なので、彼にはゲイであることを打ち明けている。
「全然いない!出会いない!もう諦めてまーす」
「あきらめんなよ笑
セックスもしてないの?」
「だから相手いねーっつってんじゃん笑」
「ごめんごめん!
てか、匠って絶対声出ちゃうタイプだよな。感じやすいし」
いつのまにか俺の背後に移動してきた隼が、指先でそわっと俺の背中をなぞる。
「あぁっ」
「ほらね笑笑笑」
俺はいつも隼に不意打ちを仕掛けられる。
これはいつものやり取りだ。
「まじやめろってば、ばかやろう!まじぶっとばすよ」
いつもはここでやり取りが終わるのだが、今日の隼は違った。