次の日。
健(そろそろ13時か。また昨日のやつくんのかな。)
♪入店音
ドライバー「こんにちはー、CDCでーす!」
健「あ、どうも。お疲れさんです。」
(今日は違う人なんだ。昨日のやつは緊急だったのか?)
ドライバー「ありがとうございます!暑いですね!今日はたくさん納品がありますよ!!」
暑苦しいくらいハキハキ喋るのは、俺より少し年下か同い年くらいの男性だった。
健「あ、どうも。」
ファイルの数値に目をやると…
健(げっ!24ケース!?ありえねぇだろ。)
通常14〜15ケースくらいの納品だが
今日は火曜。新商品の日だ。
おまけにセールとあって、本部からの
追加発注で予想外の数だ。
ドライバー「お疲れっした!ありがとうございましたー!」
颯爽と爽やかにトラックに乗り込むドライバー。
エリカと俺は、ケースの数はげんなりしながらも品入れを行った。
健「っかぁー!やっと終わった!マジ時間かかるぜ、これ!」
エリ「ほんとですよ!もう!本部のバカやろー!」
健「さ、ケース、倉庫にしまってくんわ。」
エリ「ありがとうございまーす。」
台車に積み上げた、自分の身長より少し高いケースをうまくバランスを取りながら、台車を押して外の倉庫に運ぶ。
健「よっと!これでおしまい!ん?これ、入りきらねぇかな…ん!オラ、入れこら!」
倉庫よ空きスペースに高く積み込むがなかなか最後が入らない。
健「この!入れ!」強く押し込んだその時。
健「あ!やべ!崩れる!」
男「おっと。大丈夫すか?」
もう少しで崩れ落ちるところだった。
後ろから長身の男性にケースを支えられた。
健「すみません、ありがとうございます…あ。」
男「ん…。どうも」
振り返ったそこにいたのは、昨日の納品の男だった。
太陽の光が逆光になってよく見えないが、シルエットと無愛想な声で、すぐに分かった。
健「どーも。今日は休みなんすね」
パンパンと手を叩いて、埃を落とす」
男「あー、休み不定期なんですけどね。今日休みで、チョロっと寄ったんすわ」
よく見ると、ほんとに同じような髪型だ。
でも、背が高い。178から180くらいはあるだろうか。
しかも、結構おしゃれでスポーツ系のファッションだ。
健「そうなんすね。」
男「はい。」
変な沈黙の間が続く。
健「あ、その。アイスカフェラテでも飲みます?」
男「あー。あざっす。じゃあ買い物ついでに…」
暑さもあってか、なんとなくドキドキしながら店に戻った。
♪入店音
エリ「いらっしゃいませー…って、あれ?CDCの…」
男「あ、どうも。」
エリ「あれ?店長昨日は、あいつ愛想わりぃって言ってたくせに、一緒に入ってくるってどういうことですかー?」
健「あ!おまっ!バカ!言うな。」
男「そーなんすか…すんません」
健「いや、その違うんす。昨日は初めてだったから…」
タジタジになるその感じは、奥様方に絡まれた時と同じだ。
男「店長さん、俺。初めてじゃないっすよ。何回かお見かけしたことがありますよ」
健「え?そうなんすか??」
エリ「あー、店長覚えてないなんて、ひどーい」
からかうようにして、エリカが続く。
男「まぁでも、話すのは初めてだったんで。俺、崎田です。崎田雅之。」
健「あ、俺は松田です」
雅「知ってますよ。松田健介さん」
健「え?なんで?」
雅「そりゃ、登録さてれる店長名見れば分かります」
健「あ、そっか。ども、よろしくっす」
雅「じゃあ、おにぎりとカラアゲくん、それからカフェラテください」
健「あ、カフェラテは俺の奢りで!(なんだ、フツーに喋れんじゃんかよ。)」
アイスカフェラテを作りながら
「シロップ入れますかー?」と聞く。
入れないだろうなと思いストローを刺そうとすると。
雅「あ、二つお願いします」
健「え?ふたつっすか?」
雅「あ、はい。ダメすか?」
健(意外と甘党なんだな…)と変に感心した。
甘党に悪い人はいないと言う、変な先入観があったからかもしれない。
健「どうぞ」
雅「どーも」
短い言葉のやり取り。
アイスカフェラテを左手で掴んだ雅之さんてには、薬指に指輪がしてあった。
健「結婚、してるんすね。」
雅「まぁ。してます。」
健「お子さんいるんすか?」
雅「11歳の息子が一人いますね」
なんか、少しがっかりしたような
そんな気分。
その時は、俺とそこまで歳が離れていないのに、11歳の息子がいるなんて。
早く結婚したんだな…
と、悔しい気持ちなんだと、そう思っていた。
雅「松田さんは、結婚はしてるんすか?」
勤務中は指輪などは外さないといけないため
店員が結婚してるかどうかは分からない。
健「してないっす。」
そういうと、空かさずエリカが
エリ「してるわけないじゃないですかー!彼女も6年いないんですよー!」
健「るせ!余計なこと言うな」
雅「へぇ、そうなんだ。モテそうなのに。」
健「いや、ぜんぜんす。(この人に言われるとなんかバカにされてるように感じるな…)」
エリ「店長、愛想良くしてればモテるんですけどねー。ほら、笑ってないと無愛想だから!マダムキラーなだけで、他からはぜーんぜん!」
健「うるせーよ!ちょ、お前。揚げ物してろ!」
エリカはさらに追い討ちをかけてくるようだった。
雅「俺と同じっすね。」
健「え?」
雅「俺もよく無愛想って言われます。笑ってればモテるのにって嫁からはよく言われます」
そう言いながら、ニヤっと笑って見せた。
健「あ…そ、そうっすね…」
そう言って、俺もニヤっと笑って見せる。
エリ「ほら!やっぱり似てる!髪型も一緒だし、笑えば余計似てる!」
健「は!や!く!揚げ物しろ!」
雅「俺たち似てるんすかね?」
健「い、いや。そんなわけないじゃないっすか。」
雅「そうなんすか…」
なんとなく残念そうにするもんだから、俺はタジタジしながら
健「いや、ほら!髪型は同じだから後ろから見れば似てるんじゃないっすかね!?」
雅「俺の方が身長高いっすけどね」
健(ムカッ。)
雅「じゃ、俺行きますわ。あざっしたー。」
そう言って、ニヤっと笑いながら出て行った。
なんとなく、また会えたらいいな。
そう思っていた俺がいた。