次の週の月曜日。
エリ「あ、そー言えば店長。今日からオペレーション変わりますよ。設定しときましたからねー。」
健「あー、そうか。今日からCDCの時間変わるんだっけ?」
エリ「ですよー。設定までしたんだから、カフェラテ奢ってくださいよー。」
またこれだ。エリカはすぐカフェラテをねだる。
健「分かったよ、180円な。」
エリ「わーい、やった!じゃ、私そろそろ代車出してきまーす」
エリカの言葉を聞いて時計に目をやると、12:55だった。
健「そろそろか。さて、客も早めに引いたし。さっさと終わらせて、揚げ物に移るか。」
独り言を呟いて、何気なく道路を見ると
まさにトラックが入ってきたところだった。
トラックは慣れた感じで駐車場に入ってきた。
♪入店の音
男「こんちはー、CDCでーす」
入店の音と同時に入ってきたのは
俺より5つくらい上の男性だった。
健(あれ?初めて見る顔だな。)
「あ、どーも。ご苦労さんで…」
俺が言い終わる前に、納品ファイルを置いて
台車から下ろしはじめた。
健「…んだこいつ?愛想わりぃな。」
男「っざしたー。」
とても丁寧とは言えない口調で
そそくさと店を後にしていった。
エリ「どーしたんですか店長?ドライバーさん見つめて。」
健「いや、見つめてねぇよ。どうもしねぇけど、アイツ愛想わりぃなと思って」
駐車場から出て行くトラックを見ながら
ぼそっと言った。
エリ「店長も似たようなもんでしょ」
健「いや、似てねぇよ。あんな愛想悪くねぇ」
エリ「そうですかー?SVに対してはあんな感じですよ。それに髪型とかもそっくりでした。ま、店長の方が少し小さいですけどねー」
健「うっせ。早く検品して並べるぞ」
確かに髪型は同じような感じだった。黒髪で短過ぎない短髪。ツーブロックのツンツンヘアー。でも、そんなのどこにでもいるだろう。そう思っているが、イライラと変な親近感で、なんとなくモヤモヤした。
エリ「そういえば、今の人。昼では久々に見る顔でしたね」
健「え?そうなのか?俺は初めてだった」
エリ「あー、そっか。店長、夕方からはほとんど入らないですもんね。あの人、夕方以降に配送に来る人なんですよー。」
俺は基本、バイトのメンバーが体調不良とかで欠勤しなければ、夕方には帰って次の日の朝方出勤だったから、見たことなかった。
健「なんで、昼に移ってなたんだろうな?」
エリ「さぁ?昼のメンバーが足りないとかじゃないんですかね。」
健「あー。離職率高えもんな。」
そんなくだらない会話をしながら品を棚に並べる。
エリ「そー言えば店長。この間、裏でいつも井戸端会議してる奥様方が、健ちゃんいないの?って来店しましたよー。さすが、マダムキラーですね!」
健「そんなんじゃねぇよ。奥さん方が1番、たくさん買ってくれるからな。愛想良くしねぇと…」
半分は本心だった。でも、半分はオバさん達に絡まれると思考がフリーズしちまう。
どうもオバさん達のペースに巻き込まれがちなんだ。
エリ「ほら、そんなこと言ってたら、マダムが来ましたよ!」
健「げっ、マジかよ。」
♪入店音
奥様A「あらー!健ちゃん!今日はいたのね!」
奥様B「健ちゃん、今日は何時までなの?あ、そうそう!この間、スイカ貰ったのよ!後で持ってくるわね!」
健「あ、あ。ど、どうも…汗」
タジタジになる俺を横目に
クスクスと笑いながら、エリカは品を詰めて行く。
奥様B「エリカちゃんにも後で持ってきてあげるわね!スイカ好き?」
エリ「ありがとうございます!スイカめっちゃ好きです!」
ハキハキと答えるエリカ。
タジタジになる俺。
どっちが店長だか分からない。
健「あー、疲れたわ。トラックのドライバーにしろ、奥様方にしろ…。なんか今日ツイてねぇ。」
エリ「まーたそんなこと言って!幸せが逃げますよー」
健「俺に幸せなんて来ねぇよ。」
エリ「そーかもですねー。彼女にふられて6年ですもんねー」
健「うるせーな〜。今年のクリスマスまでには作ってやるから見てろ!」
エリ「さぁどうだかな〜。店長、笑ってないと顔怖いしなぁ〜。愛想もあんまり良くないし〜」
散々ディスられ、沈む気持ちを抱き
なんとなく窓から空を見た。
高く登る雲の隙間から、太陽の光が
熱く刺さるように降り注いでいた。