出口にある腰洗い槽は立ったまま腰が浸かる深さの細長い溝が二列、並行したつくりになっていました。
それぞれ幅は二人分、仕切りは上に柵状の手すりを備えた背の低いコンクリで、左右は高い壁面。仕切りと同じ高さに手すりが付いています。
学校にあるものとはまったく別物でした。特に水中の様子はまるで違います。
左右の壁がそれぞれ二箇所ほど、あぶくまじりの水を噴き出すノズルを付けているのですが、それが水面下、丁度腰の位置にあぶくを噴きつけているのでした。
最近のプールの入口などのシャワーに腰の位置にもノズルがついているのを見かけますが、あれの水中版といった感じです。
前に来たときには何も感じなかったはずですが、やはりどこかに「ひっかかるもの」を感じて記憶にとどめていたのでしょう。
気泡と水流が利用者の股間をもみしだき尻に分け入る、言いようもなくいやらしい構造…(実際はただの循環目的でしょうが)。
できあがってしまった私はそんな妄想とともにこの場所のことを思い出し、あろうことか、人の目のほぼ絶えない中、噴出口でオナニーをしようと思いついたのでした。
あんな経験をした後で、しかも公衆の面前でどうかしていると思うでしょうが、強い嫌悪と羞恥、そしてあれだけの激しい絶頂にも関わらず、痴漢の一連の言動によって私の性は異常なほど昂ぶっていました。
このときの私にとって、腰洗い槽はそれを解消すると同時に正当化してくれる場所だったのです。痴漢の手で穢された身体を洗浄する必要も感じていたでしょう。
文字通り、様々な意味で、自分を慰めることの必要に私は迫られていたのでした。
比較的すいているトイレだったのに加え、迂回路があるため真面目に消毒する人が少なく、さらには左右の壁で周囲と隔絶されているという状況も、自慰の決行を後押ししました。
小6くらいの男の子に続いて中へ入りました。その子が水色水泳パンツの腰を薬液に浸す光景に、普通なら冷水に萎んでしまうはずの股間はますます勃起。
ありえないことですが、消毒目的で腰を浸けたその子のパンツの中に、汚れたサポーターから浸み出したものが付着する様を想像してしまいました。
(汚れたパンツで…みんなが洗うところに…ひどい…でも…消毒しなきゃ…洗わなきゃ…)
準備万端に整ってしまった身体で、ジェットバスのような強い水流にゆっくりと近づき、おもむろに横を向いて股間を当てがいました。
(ああっ………!! )
期待通りの甘美な刺激。振動を伴った摩擦、といった感じです。
シュルルルル…ブルブルブル…
じわわわん、と性器の芯にまで達するような、独特で異様な刺激。
時折人が追い越していく中、私はノズルの前に立ったまま、ゆっくり腰を上下し続けました。
確実に何人かは気が付いたはずです。別のあぶくに足をマッサージさせているような人もときどきいましたが、私がおかしなことをしているのは一目瞭然です。
水流に激しく摩擦され振動する、パンツのままのあそこ…
(なんかヘン、こんなの、いやらしい、でも)
これが腰洗い槽のしたいことでしょ?と得意の責任転嫁で行為を正当化します。
もっとも腰洗い槽で消毒が必要と考えられていたのは実際には肛門のはずですから、見当はずれも甚だしい正当化なのですが、
そんなことに気が付く余裕も知恵もなく、私はただただ水着の内外を走り抜ける水流の甘い刺激に恍惚となり、腰を動かしていました。
(やらしい…エッチぃ…エッチぃ…)
それでも賑やかな親子が入ってくるのを見て、一度諦めて外へ出るだけの理性は残っていました。
しかしもはや人の流れによっても欲求は鎮まりません。勃起したまま入口へ回り、再び中へ。
もう誰が見ていようがおかまいなしでした。
エッチなサポーターを穿いたまま、自分の手ではないものに刺激されて、不本意な(と思えるような)絶頂を強いられたい――その一心で、再度、水流に股間を近づけます。
ゴボゴボゴボ…ジョワジョワジョワ…
(あ…洗い方…えっちぃ…っ!)
しかし思いのほか刺激はソフトで、このままだといつまでたってもイけそうにない…そう思ったときです。
ふと、小学校でサポーターを持っていながら使わなかった理由を思い出しました。
まるで大昔の話みたいですが、いくら消毒液に腰を浸けてもガードが二重では効果が薄まってしまう、というようなことで、サポーターの使用が禁止されていたのです。
感染症が流行っていたのでしょうか。
なんにせよ、水着を穿かされながら水着下着の着用を許されなかったということが、ものすごくいやらしい事態として思い出されてきました。
幼稚な妄想がどんどん膨らんでいきます。
男子も女子も、薄ピチフィットの化繊一枚に剥かれ、腰を洗われる…ある子は水着に手を突っ込まれてインナーを引き出され、またある子は水泳パンツの下のサポーターを剥き出しにされて…
そうして私は刺激の倍化を促す行動の、正当な(?)理由を見つけ出しました。学校でしっかり腰を浸けろとなどと指示されるのに倣って、ここでも指示が飛ぶという馬鹿な妄想です。
サポーター・インナー等をお召しの方は薬液中で水着をお脱ぎください…といったような指示が…
(そんな…恥ずかしい……)
水着の一枚穿きが不安でサポーターを穿いてきたばかりに、むしろ恥ずかしい思いをすることになる…そんな状況が一瞬のうちに思い浮かびました。
(でも…洗わなきゃ…だから…)
後から入ってくる人のいないのを確認し、小便器で用を足すときのように、競泳パンツの前を下げました。
水面下、びっくりするほど目立つ白の光沢サポーター…。最も消毒の必要な薄布が、最もプライベートでデリケートな部分を収めたまま、水と気泡がつくる奔流の中に曝け出されました。
(あっ、はああっ…!!)
未だ一枚残しているのに水流の触手が性感帯を直撃。そんな「事実」にまた私は興奮します。
化繊の薄膜――いやらしく恥ずかしいのに加えて、その脆弱なことといったら…! それに…
(ダメ、こんなヘンなパンツでされたら、ヘンになっちゃう)
パンツ表面をまさぐりつつ無遠慮に中まで侵入してくる消毒液の蠢き――それに合わせてピッチリ生地があそこを揉み擦る気持ちのいいような気持ちの悪いような感じは、私の「被害者意識」も満足させてくれました。
さらにノズルへ近づきます。ツルツルでピッチリの股間がぶるぶる揺さぶられ、ナイロンの下で剥けた先端が水流やそれに翻弄されるサポーターに激しく揉み擦られる…強烈な性感に全身がこわばりました。
(こ、これ、すごい、ダメッ、まだパンツ、パンティ、穿いてるのに、しみちゃう!あっ、漏れちゃう、ああッ!!)
冷水が尿道に侵入してくる感覚があり、次の瞬間、ジュッ!っと、まったく不随意な反応によって私の身体はそれを押し出しました。
押し入ってきた水を排出しただけか失禁だったのかは分かりませんが、いずれにせよ漏れたような感覚の直後、またあそこの先が一段と敏感になりました(小6に痴漢されたときもそうでしたが、漏らした後のあそこってびっくりするほど敏感な気がします)。
きもちいいっ!!
人が向かってくる足音も聞こえましたが、やめられません。
(消毒、エッチ、エッチすぎる!パンツに、エッチすぎるっ!)
エッチ、パンツ、などといやらしい単語をまたしても羅列していると、あるときイイ角度で水流が当たったのか、パンツの中全体がゾワリとするような感覚に包まれ、次いであそこがまるで炭酸水に浸けられたかのような刺激に襲われました。
(あ、あ!パンツの中!中!穿いてるのにッ!入ってくるっ!洗われるっ!)
もはや激しい腰振りなど必要ありませんでした。
(だめ、洗い方、ガマンできない!漏らしちゃう!ダメ、消毒されてるのに、ダメ!)
下半身をわずかにクネクネさせるだけで、サポーターをめちゃくちゃに嬲られるさっきの感覚…痴漢されたときの最後の感覚がやってきて…
(そんなふうに、洗わないでっ!!やだ、ダメ、そんな洗い方、エッチ、エッチ!水着なしの…パンツ、そんなふうにしたら、バカっ…ああっ、エッチ、パンツも、エッチ、エッ…、ああああっ!!!!)
チュッ、チュッ、チュ…!!
冷水の中で固く縮んだ睾丸が、さらに奥までぎゅうっと、鈍く痛みを感じるほどに収縮して、水に揉まれるサポーターの裏、消毒液の滲み流れる繊維の上に、強烈な快感に反して控えめに精液を絞り出しました。
ふるふるっと、用を足したように身体を震わせた後、競泳パンツを元に戻し、水から上がりました。
強い日差しの下を歩きながら、放心していました。短時間で不自然な射精を強いられたためか、睾丸が鈍く痛み、それがなかなか引かないのを不安に思いましたが、そんな考えもすぐぼやけていきます。
疲れ果てていました。
友達の声で我に帰るまで数分はふらふらしていたでしょう。
探したよと言われ、泳ぎ疲れてフラフラしてたとウソをつきました。
一人離れてから相当に時間が経っていました。しかし流れに乗って一周泳いできたという友達も一人、しばらくはぐれていたようで、私だけに非難が集中しなかったのは幸いでした。
それからあとは、ずっと何かモヤモヤした気持ちで過ごしました。
ムラムラもありませんが、達成感?のようなものもありません。
私の絶頂を文字通りサポートしてきたサポーターも、腰洗い槽とその後また入ったプールで洗われたのか、着替えるときにはだいぶきれいになっていました。
あれだけのことがあったにもかかわらず、その痕跡も薄く、日常が帰ってきたのがなんだか不思議でした。
一連の出来事をじっくり振り返ったのは帰宅してから、夜自室で一人になってからのことです。
ここまで無茶苦茶をやるやつが…と首を傾げられるかもしれませんが、悔しさ、恥ずかしさ、自己嫌悪のあまり、泣いてしまいました。
二度の激しい絶頂で性欲が解消されたせいか、自分の行為や言動、それに痴漢男の気色悪さばかり思い出されます。
風貌は目にしなかったものの、頭のおかしい人には違いありませんでした。
怖い、悔しい、恥ずかしい…
それに…
バカみたい
そんな思いばかり渦巻いて涙が溢れました。
以前にも書いた通り、この日のことは通しで思い出すと今でも嫌悪が先に立ちます。
それなのに以来ずっと、思い出すたび股間が膨らみ、あの奇妙なサポーター越しに好き勝手された感覚、また消毒の名目で腰の薄布をまさぐられ、白濁した液体の中でひとしきりエッチなダンスを踊らされてイかされてしまう妄想を現実のもの
にした水流オナニーの快感が恋しくなってしまうのです。