いつもの公衆トイレを思わせる環境だったからでしょうか。
あんはふうに言われて、あんなふうにされて、と、サポーターを捨てるのに十分な理由を挙げていく中で、私の変質的な性欲が早くも頭をもたげてきました。
涙を浮かべ、はぁぁ…っ、はぁぁ…っ、と震える息を吐きながら、つい数分前の出来事を回想します。
(スケベパンツ)(汚いパンツ)(パンツで、プール)(パンズリスケベ)
立ち上がり、再び固くなりつつある股間へサポーターを引き上げました。
ピチッ…パツンッ…!
女性用ショーツを思わせる艶やかな表面に、切れ上がった脚刳り。
一番プライベートでデリケートな部分をくまなく覆い吸着し、無遠慮に締め付けて刺激する伸縮素材。
未熟な性を苛む弾力と密着感は、裏地やメッシュのサポーターが通常は遠ざけている水着素材のそれでした。
水泳パンツの裏地を取り去ったことも、本体と同素材の裏地がある水着を穿いたこともなかった私は、改めてその着用感に恥じらい、辱められているような感覚になぜか性をくすぐられて股間を固くしました。
弾力的な刺激が股間から下腹部全体にまで浸透し、性器のずっと奥の方にまで響いてくるよう…
恥ずかしい格好を強制され、恥ずかしい感覚をかきたてられている――
そんな状況と想像して、なぜか胸がキュンとなります。
直接触れることのないよう配慮されているように思える水着の本体生地を下着として着用させられることがあるという事実にもひどく興奮していました。
刺激のもとになってしまうような生地でつくられたパンツ。
こんなパンツを強制的に着用させられる子もいるのだと思うと…
蛍光灯の下、妖しく光沢を放つナイロンインナーの信じがたいいやらしさに激しく羞恥心を煽られながら、羞恥に性をくすぐられ、不穏な想像に翻弄される。
そのこと自体にまた羞恥を掻き立てられ、胸を切なくし、そんな戸惑いがまた見た目と穿き心地のいやらしさを倍加して感じさせる…
倒錯のスパイラルでした。多感な中学生を倒錯に陥れる危険な水着下着。そんな下着に、あんな品名がつけられているのだからたまりません。
(パンティ…男の子の…パンティ…スポーツパンティ…スイミングパンティ…)
こんなものを穿いていたら、あんなふうに言われても仕方ない。こんなものを穿いていたから、あんな気持ちの悪いやつに触られて、イってしまった。
自分の性癖や行動を棚に上げてそんなことを考え始めました。
(パンツのままがいいんか?)
明らかに痴漢は、私がエッチ目的でこんなものを穿いているのだと思い込んでいました。
しかしそれは、少なくとも半分は誤解でした。
第一に、水着と違って、サポーターは買い与えられただけの、この日の朝まで存在を忘れていたくらいの代物です。
フェチな下地があったとはいえ、私はむしろサポーターに強いて興奮させられた身でした。
第二に、市販品である限り同じものを穿いた男の子は大勢いるはずです。
妙な感情を抱くことなしに着用している子もいるかもしれません。
痴漢が私のフェチを知るはずもありませんから、仮にそんな子が襲われていたとしても、同じことを言われたはずなのです。
(パンツでプール入りやがって。パンズリスケベ)
無垢な男の子に、そんな罵りを呼び込む残酷なサポーター。
エッチな下着を穿くのに興奮し、下着で水に入るのに興奮し、水の中下着越しにズリズリ刺激するのが好きな変態少年。
あの痴漢の前でこんなサポーターを穿いていたら、誰でもそんなふうに理解されてしまうのでしょう。
あれだけ盛大に射精したにもかかわらず、サポーターはもうパツパツに張っていました。
(こんなの穿いてたら仕方ないもん…もう一回、しないと…)
そんなふうに考えて手を伸ばしかけたとき、もうひとつ、痴漢の言葉を思い出しました。
(汚いパンツは洗わなきゃな)
今やサポーターは、痴漢に言われた通り本当に汚いパンツに成り果てています。
パンツを、洗う…?
痴漢行為をそんなふうに正当化するなんて…。
(洗われて、イッった…?)
以前にも書いた通り、最初の痴漢にあって以降、時折していた妄想にそんなシチュエーションがありました。
同級生が腰洗い槽(消毒槽)でエッチな気分になったりイッてしまったりするという妄想です。
「腰洗い」という響きにどことなくいやらしいものを感じて、そこに痴漢された記憶を投影していたのでした。
プールや水着に関することはなんでもエッチに捉えてしまう私でしたから、腰洗い槽などは格好の妄想の種でした。
水着越しにシャワーを浴びせるだけでは不十分、といって、一人一人水着を脱がせて股間を洗うわけにもいかない。
そこで水着を着けたまま消毒液に下半身を浸させ、水着とその中の不浄を洗い落とすため考案された設備が腰洗い槽です。
水着を穿かせたまま、いかにして入水者の股間を洗うか、こんなことを考えて造った設備があるんだから、やっぱりプールっていやらしい…
衛生上の配慮を、私はそんなふうに理解してしまうのでした。
水着に包まれた敏感な箇所を、同じ水の中で一斉に「洗う」。
個性も尊厳も脇に退けられて、用途のあからさまな水槽へ男女の別なく腰を沈めさせられる。
パンツやパンツ状の部分に覆われた箇所――この隠された部分を、プールは直接に洗いたくて仕方がないんだ…
そこから、あの日の痴漢のように水着の尻や股間をまさぐって「洗う」腰洗い槽の妄想に行き着くのに時間はかかりませんでした。
いやらしい目的などないはずの腰洗い。しかし男子も女子も、ピチピチな水着の上からモミモミゴシゴシされてことごとく感じてしまい…
そんな妄想をしていたせいで困ったこともありました。
大勢の水着の前後から滲み出した汚れで消毒液は次第に白く濁っていきますが、学校では授業の途中で用を足した場合、汚濁した、いわば使用済みの洗浄液に再び腰を沈めさせられます。
水着だろうがサポーターだろうが、消毒液は容赦なく浸透してその奥を侵していく…トイレ後の敏感な尻や股間が、消毒という名目で汚水に蹂躙される…
ついそんなことを考えてしまった途端、水の中、水着を貫いて性感を送り込んできた痴漢の行為が連想されて、激しく勃起してしまったのです。
競泳パンツ一枚では隠しようがなく、上がった後は足を痛めたように装って屈み込み、萎むのを待ちましたが、気が付いた子もいたでしょう。
地味に恥ずかしい思い出です。
(洗わなきゃ…)
腰洗い槽の妄想、そして数分前のあのすさまじい刺激が思い出され、サポーターの前がいっそうパツパツに張りました。
本当に愚かです。しかしその後にしたことも狂っていました。
消毒槽に入ってくれば大丈夫だよ――監視員のお姉さんの言葉を思い出して、私は競泳パンツを引き上げました。
二重の締め付けで勃起がそこそこ隠される(実際まるわかりですが)のを確認すると、すぐさま個室を出、出口へ向かいました。