ゆうたさん、ありがとうございます。展開が遅くてすみません。
彼は僕の耳にそっと「I want to see your everything」とささやいてきました。すごくクサい台詞ですが、イケメンが言うともっともらしく聞こえるものです。僕は緊張で震える声で、「Me, too」と返しました。酒のせいもあり、喉がからからで思うように声が出ませんでした。彼は周りにたくさん人がいる中、僕の手を引いて、外に出ました。すれ違う人がみんな僕たちのことを見ているのが、感じられました。
外に出ると彼はすぐにタバコに火をつけ吸い始めました。僕は思い切ってこの後僕の家に来ないか誘ってみました。でも「今日は友達と帰らないといけない」とあっけなく断られました。がっかりする僕を見て、彼は紙切れに自分のメールアドレスを書いて僕にくれました。今の時代携帯で入力すればいいのに、わざわざ紙に書いて渡すアナログなところが、すごくかわいく感じられました。そして「Send me an e-mail」と言ってくれました。どうやら、彼はさっきあれだけ人前でキスしてきたりしたのに、友達にはカミングアウトしていないから、バレたらまずいということだったのです。その後彼は、友達のところに戻っていきました。僕は遠くから眺めることしかできず、誰か別の人に捕まってしまわないか不安でたまりませんでしたが、トマスは時々僕の方に笑顔やウィンクを送ってきて、まるで他の人のところになんか行ったりしないと言ってくれているようで、不思議な安心感がありました。そうしているうちに始発の時間になり、僕は家に帰るまでにもう一度トマスに挨拶をしたいと思ったのですが、彼はもういませんでした。
その後家に帰りましたが、すぐにメールをするとあからさまに好きみたいだったので、その日のお昼くらいまで待って連絡をしてみました。「昨日は会えて良かった。今度は二人で遊ぼう」と。メールを送った後の時間は永遠のように長く、3分に一度は携帯をチェックしていたと思います。返事が返ってきたのは、その日の夕方でした。短く「こっちも会えて良かった。スケジュールをチェックしてからまた連絡する」とだけ書いてました。ちょっとノリの悪そうな返事に、僕はがっかりして、きっと酒が入った一夜だけのことだったのかなと期待をしないことにしました。
そしてまた学校とバイトで忙しくなり、トマスのこともあまり考えないようにしながら時間が過ぎた木曜日の夜。11時過ぎにバイトが終わってロッカーに入れていた携帯を見ると、トマスからメールが来ていました。「土曜日に会える?」メールがきたのは夜の9時半過ぎ。すぐに会えると返事をしました。そしたらトマスからまた返事が来て、「Can you send me your picture so I can see your face whenever I want to? (君の顔が見たくなったらいつでも見られるように写真を送ってくれない?)」と書いていました。僕は30分くらいかけて自分が一番よく見えるアングルで写真を撮り、送りました。「トマスのも送って」と返事を添えて。そして返ってきたメールには、彼が上半身裸にタオルが下半身に巻いてあるセクシーな写真が付いていました。その写真をすぐに保存し、その夜はベッドでずっとその写真を眺めていました。
そして楽しみにしていた土曜日がやってきました。僕たちは、新宿南口の花屋の前で、夜7時に待ち合わせをしていました。