田舎に生まれ、周りにオープンにゲイの人が一人もいない環境で育った僕は、男に興味があったものの、それを打ち明けられる人も、その気持ちを共有できる人もなく、自分自身さえもいつかは彼女ができ、結婚するんだろうと考えていました。そんなセックスもしたことがないウブな僕も、大学入学のときに上京し、僕は数は少ないながら自分の気持ちを共有できる人も見つけ、こっちの世界に関する知識が一気に広がりました。高校のときに初めて行った海外のオーストラリアで、日本人とは全く違う白人のかっこよさに虜になった僕にとって、かっこいい外国人があちこちにいることは何よりも嬉しいことでした。でも、周りにたくさんいることと、かっこいい人に好意を持たれることはまた別問題で、なかなか思った人を手に入れることができずにいました。そしてその間、僕はこれまで田舎で育って何もできなかった時間を取り戻すかのように、そんなに好きじゃなくても、たくさんの人ととりあえず寝たりしてました。
そんな自分の中のハードルを下げることに反比例して、心の底では常に白人のモデルのような人を求めるようになっていました。でもそもそもそんな人はネットでも見かけることがないし、街やクラブで見かけても、もちろん話しかけることもなんかできず、モデルのようなイケメンとセックスする想像と欲求だけが大きくなっていきました。
そして、その夢が現実に変わったのは、僕が大学3年だった21歳のときです。もう6年くらい前のことです。その日はゲイの友達と鍋パーティをしていて、その後ちょっと酔っぱらった勢いでクラブに行こうという流れになりました。でもそのゲイの友達はノンケの子や女の子も誘っていて、2丁目ではなく渋谷のクラブに行くことになりました。そのクラブは外国人が少なめで、まわりには日本人ばかりいたのですが、しばらくすると、白人の2人組の男が入ってきたのが目に入りました。一人は身長が190くらいあって長めの髪にメガネの知的なタイプ、もう一人は身長が180越えくらいで、俳優のDouglas Boothをもうちょっと鋭くした感じです。すでに周りの子達にカミングアウトし、少し酒が回っていた僕は「どんな男の人がタイプなの?」とか聞かれ、すぐに「あそこの2人組の髪が短い方」と答えました。でも2丁目でもないので、きっとノンケなんだと思って、アクションを起こせるわけでもなく、遠くから眺めているだけでした。