放課後の図書室。
人もあまりいないこの空間で、図書委員の僕はカウンターの中に座ったまま当番の時間が早く終わるのをただ待っていました。
僕が通っていた中学校ではクラスから必ず一人図書委員を選出する決まりになっていました。中学校に入学してすぐのホームルームで、たまたま本を読むのが好きというような自己紹介をしてしまったがために、担任から「図書委員はお前で決まりだ」と一方的に言い渡されてしまったのです。
各クラスから選出された図書委員は、当番制で昼休みと放課後とに図書室に来て、本の貸し借りの手続きをしたり、本棚の整理をするのが仕事でした。
僕は当番が火曜日の放課後だったので、この日は授業が終わった15時半から下校時刻の18時まで、毎週図書室で過ごすことになりました。
僕は本を読むのが好きではありましたが、委員のような仕事はあまり好きではなく、毎週まわってくる当番もなんとかさぼりたいとも思っていました。けれど特段の用事がなければ、そして用事があったとしても親からその旨を生徒手帳に書いてもらわなければ、当番は免除になりませんでした。当番日に黙って下校したならば、きっと翌日図書担当の先生や担任から叱られるだろうということはわかっていましたので、僕はいやいやながらも毎週火曜日の放課後には図書室に行って図書委員の仕事をしていました。