コメントありがとうございます!何度もコメントしてくれる人もいて、すごく嬉しいです。ノロノロ書いてすいません!明日、キョウスケさんがやってる仕事のバイト!報告書書かないと…
続きです
先生に言われた通り、食事の時間を変えたけど、まぁそんなにすぐに変わることも無く、相変わらず吐いたりは続いた。でも、なんか、吐き気が来ても我慢したりせずに自由に吐きに行けるからか、少しずつ一回の食事で吐く時間は短くなっていった。
それから、一か月ぐらい経った。
鈴木先生の所に何度か通って、アキラさんとのことを除いて、俺の昔の話も色々話せていた。
鈴木先生は、話を引き出させながらも、無理に聞きだしたりはしない。雑談もして、今度来るときに、コレ貸してあげるから、とか約束を取り付けてくれるから、俺も次にそれを口実に行きやすかった。俺のバーにも飲みに来てくれた。
その一か月で、少しずつ固形物も食べれるようになって、吐く回数もだんだん減って行った。
「鈴木先生、こんにちは。差し入れ持ってきた」
大分、鈴木先生と打ち解けて、俺の生活の中で昼間鈴木先生に会いに来るのが一つの生活のサイクルになっていた。
鈴木先生には弟が3人いるらしく、そのうちの末っ子と俺が似ているらしくて、俺のことも4人目の弟みたいって言ってくれた。
俺が持ってきたケーキを見て鈴木先生が幸せそうな顔になる。先生はすごい甘党でカウンセリングルームにはいつも大量のお菓子が置いてあった。甘いものを見た時の、その幸せそうな顔を見るのが好きで、いつも差し入れを持って行ってた。
自分にはコーヒーを沸かして、俺にはミネラルウォーターを出してくれた。
「最近は、ご飯はどう?」
「だいぶ吐くのがなくなってきました。スープとか、春雨とかなら吐かずにお椀1杯とかいけるようになりました」
「おーすごいじゃーん!頑張ってるなー!」
偉い偉いって言いながら頭を撫でられて、照れくさかったけど、嬉しかった。お兄ちゃんがいたらこんな感じかなって。
「そういえば、昨日アキラくんから電話があったよ」
「…アキラさんから?」
「そうそう、マサキの体調心配してたかな。いい子だよねー」
「そうですか…」
久しぶりに出てきたアキラさんの名前にドキッとした。そんな俺の様子を観察しながら、鈴木先生が続けてくる。
「実をいうと昨日だけじゃなくてねー…」
「え?」
「マサキが来始めるくらいから、ずっとアキラ君もちょくちょくうちに通ってたんだよ〜」
「アキラさんが?患者として?何かあったんですか!?」
初めて聞いた事実に、ちょっと詰め寄るように鈴木先生に言い寄ってしまった。そんな俺を見て、鈴木先生がやんわり笑った。
「他の患者さんから話されたこと、話しちゃだめなんだけどねー…マサキ、アキラ君と付き合ってるんでしょ?」
言われて驚いた。俺がゲイってことは鈴木先生には話してたけど、アキラさんのことは、知り合いの人程度にしか言ってなかったから。
「最初に、アキラ君からマサキのこと相談された時に、俺の恋人を連れてこようと思ってて…って紹介されてたからね〜。だからマサキが来る前から知ってはいたんだよ。びっくりしたけど、俺は報告されたとき、良かったなーと思ったの」
「良かった?」
「うん、アキラ君も結構前から俺の患者さんでね。今は落ち着いてるけど、前は結構いきなり情緒不安定になることが多くて、体中にじんましんが出来て治らなかったりしてね、それでずっと通ってたんだ」
「そうなんだ…全然知らなかった」
「夜の世界は、やっぱ色々あるからね〜。お店の順位があがるにつれて、頻繁には来なくなってたんだけど、たまに、来るとすごい疲れた表情してたね〜。表面上ばっかり、人との関係取り繕うのが上手くなって、本当に信用できる人が居ないって感じだった」
鈴木先生が、珍しく真面目な顔でずっと話してくれた。なんでこんな話をするんだろうって…不思議だった。
「アキラ君、最初に電話かけてきた時、はっきりとマサキのこと、俺の恋人なんですけどよろしくお願いしますって言って来たよ。マサキのおうちのこととかは話してなかったけど。お店の順位がナンバーワンになって、アキラ君に恋人出来ました発言なんて聞いたことなかったから、ああ大事な人が出来たんだなって思ってた」
そこまで言って、鈴木先生が黙った。何も言ってこないけど、多分何で別れようと思ったの?ってことを言いたいのかなって思った。
沈黙に耐えれなくて、なんか、自分から吐き出してしまった。
「俺は、今まで大事な人っていなかったから、いなくなる怖さがなかったんです。でも、アキラさんが大事な人になって、いなくなるんじゃないかってのがすごい怖くなった。色々幸せなこととか知ったら、なくなった時が怖い…。でも、最初から持ってなかったら、なくなる怖さもないから…」
色々、考えたけど、多分これが一番の理由だった。自分勝手な理由。アキラさんの優しさがしんどかったとか、アキラさんのせいにしたけど、結局自分が背負いきれなかっただけ。
鈴木先生は、俺を責めることもなく、笑顔を崩さず聞いてくれた。
「大事なもの程、なくなるときを考えると怖いのは誰でもある気持ちだよ。マサキだけじゃない。それでも、人が誰かを求めてしまうのって、大事な人とだからこそ共有できる時間とか、感情があるからじゃないかな〜って思うんだ」
「大事な人とだからこそ…」
「アキラ君と過ごした時間、辛いだけだった?」
言われて、色々思いかえす。
アホみたいなこと言って笑わせてくれて…
人のちんこ、いつもからかってきて…
俺の料理を、「おいしい、天才」とか言いながら食べてくれて、
喧嘩した次の日、朝食のオムレツの上にゴメンってケチャップで書いて謝ってきたり…
いつも「好きだよ」って言ってくれた。
色々思い出して、鈴木先生の前でめっちゃ泣いた。
「すごく…幸せだった。また…戻りたい…」
鈴木先生は笑顔で、頭を撫でてくれた。