次の日、二日酔いの頭痛と喉の渇きで目が覚めた。アキラさんが入れたウィスキーのボトルをハイボールにして飲ませてもらっていたので、結構ひょいひょい飲んだ。ちなみにバーテンなのに、酒は全く強くないので、いつもお客さんにもらってもこっそり、ノンアルに変えてる。
携帯を見るとラインが1通。アキラさんだった。内容は、昨日ありがとーってことと、結構意識飛んでたけど、大丈夫?笑 ってことだった。
(俺、女じゃないのにマメだな〜さすがだな〜)
とか思いながら、一応社会人の常識の範囲内で、ありがとーございましたってことと、面倒かけましたーってことと、またお店にいらしてくださいね、的なことを送る。
そこから何通かたわいもない話をラインでして、夜になり、その日も仕事に向かった。
それから、アキラさんは毎日のようにホストの仕事が終わった後、うちの店に飲みに来るようになった。女の子とのアフターの時もあれば、一人で来る時もあり。
「猫が交尾してたの見てムラムラしてきた。笑」とか、すげーくだらないことでラインしてくることも増えた。
ガチタイプだったけど、ノンケの人間と恋人になれると思える程、身の程知らずでもなかったし、俺の中でのアキラさんの立ち位置は、友達に近い常連さん以上の存在ぐらいの感覚だった。
アキラさんと初めて会ってから1か月が経ったくらいの頃、仕事終わり間際に、アキラさんから電話が来た。
「マサキー、仕事終わった?今日飲みにいこ〜…」
アキラさんの声は、いつものバカみたいに(笑)明るい声じゃなく、明らかに落ち込んでる声。アキラさんのそんな沈んだ声初めて聞いたもんで、俺は2つ返事でOKした。
店の近くで待ち合わせ。アキラさんの落ち込み具合は顔にも出てて、いつもより口数も少ない。いつもはスムーズに店を選んでくれるのに、店選びももたついて、正直言ってそんなに飲みたいように見えなかった。
「アキラさん?大丈夫ですか?なんか、沈んでるなら、酒なしでも話だけとか聞くし、どっかカフェとか行きます?」
「うーん…仕事関係の人の目、気にしたくないし…酒買ってうちで飲む??」
正直、恋愛対象ではないにしろ、家に呼ばれてドキッとした。俺がゲイなことアキラさんは知ってるし、これチャンスか!?って気持ちと、全く男とどうこうってのが考え付かないか…。
(まぁ、断ったらそっちのが下心ありそうだから、行くしかないんだけど)
なるべく、下心を悟られないように、返事をして近くのドンキで酒を買って、タクシーでアキラさんちに向かった。
「広いですね」
アキラさんちはタクシーで10分のとこにある2LDKのマンションだった。部屋の中は男の一人暮らしって思えないぐらい綺麗にしてた。
一部屋はでっかいソファが置いてあるリビング、もう一部屋はクイーンサイズぐらいのでかいベッドが置いてあった。寝起きのまんまって感じの布団に色々妄想。笑
好きなとこ座ってって言われて、ソファの上に座る。ふっかふか。笑 アキラさんがグラスを2個持ってくる。スーツ脱いだワイシャツ姿がエロい。笑
とりあえず赤ワインで乾杯して、飲み干すと、キッチンからレンジの音が聞こえて、何品か手作りのおつまみみたいなのが出てきた。
「アキラさん彼女いるんですね。家帰ってこんなつまみ作ってあるとか、うらやましいです」
「は?俺彼女とかいないよー?笑 これ、俺が作ったの!俺、コンビニ弁当とかあんまり好きじゃないから、基本自炊」
「まじっすか?どんだけいい嫁ですか!笑 俺、店で作る以外、家ではほとんどコンビニです」
「マサキも一人暮らしだったよね?マサキの作る料理オシャレだから俺好きー」
「そりゃ、店でのやつですから。俺、こういう茶色い料理作れないから、こういうの作ってみたい」
「え?何?俺バカにされてる?」
そんな感じで飲み進めていったら、アキラさんも割といつものアキラさんになってきた。やっと笑顔が戻ってきたことに、ほっとして、そこそこ酒も入ったくらいで、アキラさんに落ち込んでた理由を切り出してみた。