僕は昔から女に囲まれて育てられた。
3人の姉と母。
父は単身赴任。
いとこも女だけ。
近所にも年が近い男子はおらず、女の子とばかり遊んでいた。
そんな僕は、いつの間にか女の子と一緒に、同じ扱いを受けることを普通だと感じていた。
だから、男らしくというのが嫌いだった。
でも、いつまでも女の子と同じではいられなかった。
成長する体。
それを受け入れられないわけじゃなかった。
ちゃんと自分を男だとは思っていたから。
でも、男らしくという言葉は、やはり嫌いなままだった。
そのことを父に相談したら男子校を勧められた。
中高一貫で、父も通っていた所だ。
同世代の男子の中に入れば、きっと気にならなくなる、とのことだった。
あとは、女子を気にせず性に関する話ができるから、とも。
数ヶ月振りに会った父は、やはり父親だった。
頼りになって、優しくて。
ちょっと過保護で僕をまだ小さい子供のように扱うけど。
でも、父が僕の中で唯一尊敬し、憧れる『理想の男』だった。
次の日から受験に向けて勉強した。
難関ってわけではないが、どうせなら余裕で入学したい。
勉強は嫌いじゃなかったため、成績も伸び、見事、男子校に入学できた。
学校は楽しかった。
最初こそ馴染めない感じはあったが、周りのおかげで溶け込むことができた。
そんな、中1の夏。
僕は2年の先輩に恋をした。
水泳部の佐久田先輩。
図書委員の当番で一緒になった時に話しかけてくれた。
小柄な僕じゃ届かない棚の上に本を置いてくれた。
重たい荷物も持ってくれた。
そして、何より「可愛い」と言ってくれた。
部活に入っていなかった僕は、先輩に勧められたこともあり、マネージャーとして水泳部に入った。
初日。
部員と先生の前で挨拶をした。
3年が5人。
2年が6人。
1年が8人。
そして、先生が2人。
「マネージャーとして入部させていただくことになりました佐藤ハルカです。よろしくお願いします」
拍手で迎えてくれた部員。
雰囲気を見ても、みんな仲が良さそうだった。
「じゃあ、早速準備するか」
用意する物を先生に教えてもらいながら準備をした。
皆、隠さないで着替えている。
もちろん佐久田先輩も。
皆、水泳部なだけあって、引き締まった体をしていた。
「佐藤、ちょっと来てくれ」
「は、はい!」
顧問の森先生に呼ばれ、名残惜しさを感じながら教官室に入った。
続きます。