料理が運ばれてくるのを待つ間、
ずっとその店員さんのことを目で追ってしまいました。
厨房とホールを右往左往する彼の顔は充実感いっぱいで、
うっすらと汗ばんだ肌はセクシーすぎて、自分を悶々とさせます。
どうせノンケだろう。
でも、目の保養には良いや。
なんて汚れてんだろ、自分。
正直、そんな気持ちがぐるぐると回っていました。
今まで幾度と無く恋をしては、思いを伝えることなく終わりを告げるの繰り返し。
だからと言って自分をさらけ出してまで、どっぷりとはまる勇気もなく、
そんな自分にだいぶ嫌気がさしていました。
(あんな人と恋人同士になれたらなぁ……。
でもそんなことはあり得ない。無理無理。)
そう思っていたとき、ふと、その店員と目が合ってしまいました。
慌ててそらすこともできずヤバイと思っていると、
ニコリと笑って軽く頭を下げてきました。
思わずドキッとして、身体中が物凄くアツくなりました。
(ヤバイ、変に思われたかも……)
そんな心配をしながら何事もないそぶりで待っていると、
「お待たせいたしました。野菜炒め定食です!」
と、彼が笑顔で料理を運んできてくれました。
「ありがとうございます」
こちらも笑顔で返しました。
絶対に無理だと思ったけど、それでもやっぱり、印象を悪くしたくはなかったので…。
彼のことも気になっていましたが、やはり腹が減っていたこともあって、
料理を食べるのに夢中になっていると、ふいに、
「お味はどうですか?」
手に空いた食器を持った彼が声をかけてきたのです。
「ぅえ!あ、すみません、お、美味しいです!」
びっくりした自分はもう傍から見たら、何だこいつ?
と思われるくらいテンパっていたと思います。
「良かったです。ごゆっくりどうぞ」
そう言って去っていく後ろ姿に、自分はどんどん引き込まれてしまいました。
(どうせ、営業スマイルだよな……)
と思って、必死に冷静になろうとする自分。
きっと、あとでガッカリするだけだから。
その反面、自分の頭の中ではあらぬ妄想ばかりが膨らみました。