続きです。
「源太はどうなんだよ?」
「いたことあるに決まってんじゃん」
本当は付き合ったことはない。
女になんて興味ないし。
男なら何人か付き合ったことはあるけど。
「むぅ…。なんか先越されたって感じ」
「23で童貞とか恥ずかし〜」
からかうように言ってみた。
「やっぱりそう…?」
あ、気にしてるんだ。
ちょっと落ち込んじゃった。
「でも、無理してヤル必要はないんだしさ。丈瑠がヤリチンってのもなんか嫌だし」
これはちょっとした独占欲かも知れない。
女にいかないで欲しいっていう。
「だよね。初めては好きな人がいいし」
女の子か!
いや、気持ちは分からなくはないけど。
チラリと時計を見る。
少し長話になってしまった。
「話の続きは俺ン家でしようか」
「りょーかい」
プレゼントの財布(と、ラッピングの包装紙)が入った紙袋を持って立ち上がる丈瑠。
並んで歩くのも高校以来。
途中、酒屋に寄って酒とおつまみを買った。
「あ、ケーキ…」
忘れてたと言った様子で呟く丈瑠。
「買って来ようと思ってたのに忘れてた…」
あ、本当に忘れてたのか。
「そんなこともあろうかと…というか、丈瑠の好みで買われると甘くて食えなさそうだから既に買って、家に置いてある」
「ほんとに!?さすが源太、気が利く男はモテるよ〜」
「茶化すと食わせないよ?」
「ごめんごめ…ッくしゅん」
可愛いくしゃみをする丈瑠。
「冬に薄着してっからだよ」
仕方ないから自分のコートを着せてやった。
「源太が風邪引いちゃうよ?」
「お前よりちゃんと防寒対策してるし」
本当は寒いけど。
でも、なんかドラマとかみたいでカッコイイじゃん!
コートを返す云々の話をしばらくしているうちに、我が家に着いた。
普通のマンション。
なのに丈瑠は「金持ち!」と何度も言ってきた。
まぁ、確かに一人暮らしだし、安いアパートでもいいんだが、そこは多少の見栄だ。
高卒でも俺のが給料いいんだぞという、大卒の人に対しての。
まぁ…努力の賜物だ、きっと。
運も少なからずあったけど。
鍵を開け、丈瑠を招き入れた。
「お邪魔しまーす」
キョロキョロしながら入ってきた。
「広いね!一間じゃないし!」
「まぁ…一人で住むには広いかもね」
「いいなぁ…」
勝手に散策を始める丈瑠の後ろを俺はついて回った。
続きます。