日曜日、彼の地元駅で待ち合わせになった。自分の住んでいる方向とは反対で
遠かったが別に気にならなかった。高校を卒業して数ヶ月ぶり、やっと彼に
会えるのだからと嬉々としていた。数分経って彼が姿を見せた。高校の時と同じ
綺麗な細身の身体に黒ジャケットを身に着けていた彼。どんな服装を着てても
惚れ惚れしてしまう。自分は彼に見惚れながらも、久しぶりと声をかけた。
そのまま近くのカフェで話そうと誘われ、二人で席につくと彼は何だか深刻そうな表情をしていた。
「どうしたの?急に呼び出して」
そんな演技じみた事を言いながら、彼は重そうな口を開いた。
「お前、俺の事ストーカーしてるよな」
はっと心臓を掴まれたように自分にとって一番衝撃的な言葉を発した。
数秒間固まってしまったが、自分は咄嗟にそれを隠した。
「は?何言ってんの?。何でお前のこと…」そう話しているのを遮るように
「もういいよ、別に。お前隠してるつもりかもしんないけど、前から知ってるからさ。」
俺は完全に黙ってしまった。彼の話によると、自分のロッカーが漁られた時に
それを担任に相談したら、学内にとりつけられた防犯カメラを調べたら俺がロッカーの辺りを
出入りしているのが見つけたのだという。さらに彼は、俺が学校内でもジロジロ
見ていること帰り道を尾行しているのも大分前から気付いていたそうだった。
「別に何かしてるくるわけじゃねぇしさ、高校にいるまで放っておこうと
思ってたけど…卒業してからもやられると流石に…ちょっと迷惑っていうか…。」
言い出し辛そうな顔をしながらも、彼が全部話しきった。…こんな所、来るんじゃなかった。
重たい雰囲気の中、自分は顔を落とし彼の顔を見る事も出来なかった。
重すぎて頭がクラクラしそうになっていた頃に前にテレビで話していたことを
思い出した。ストーカーは自分は気付かれていないと思っていても、相手や
周囲にバレバレだったりすると。情けなくて悲しくなっていた。当の本人は
とっくに気付いていたのに、自分は何度も彼を追いかけて…惨めで涙が出そうに
なっていた。
「ごめん…」
今更の様にそう呟くと、彼は意外にも許してくれた。
「いいよ別に、俺さ…ぶっちゃけソッチの趣味ないんだけど人が人を好きに
なるっていう気持ちは大事にしたいっていうか…俺だってフラれたりした事
あるから…まぁ、とにかくもうやめてくれればいいよ」
こんな時になってさらっと綺麗事を言うから嫌味かとも思ったが
彼なりにフォローしてくれているのだとついその時は泣いてしまった。
カフェにいた店員や他の客のことなんか気にしないで自分は謝罪した。
「ああ、やめろよ。もう別にいいよ。…それでさ、これで
終わりになるのも俺、何か後味悪いから…最後に付き合ってやるよ」