「久しぶり!」
中学時代の親友達との再会。
前に会ったのが中学の時だったから10年振りか。
正直、参加するか迷った。
成人式にも出なかったし…。
会いたくなかったわけじゃない。
大切な仲間だ。
ただ一人。
会いにくい人がいる。
ただそれだけだ…。
車に合い乗りし、旅館の宴会場に向かった。
「シーズンじゃないから空いてるんだ」と旅館の息子である宏樹が言った。
「あのさ、和樹は来るのかな?」
俺が聞くと「たぶん来るんじゃね?お前ら、昔はよく連んでたよな」と、勇太が笑った。
連んでいた…。
そうだ。
昔はよく一緒にいた。
だからこそ俺は和樹に惚れた。
笑顔に。
泣き顔に。
和樹も同じだと思った。
唇を重ねた時から。
好きだと言いながら体を求め合った時から。
将来を語り合った時から。
…それを裏切ったのは俺なのに。
親の都合で高校は県外に行った。
同じ高校に行き、卒業したら一緒に住もうと。
幼い約束をしたのは自分からだったのに。
「和樹って今は何してんの?」
「大学卒業してから結構イイ会社に入ったらしいよ」
「へぇ…」
それからみんなの話を聞いた。
宏樹は旅館を継ぐらしい。
勇太は営業マン。
「お前が県外行ってから和樹変わってさぁ」
「そうそう。あんだけバカやってたのが急に真面目になって」
「成人式の時は騒いでたけどな」
二人が笑う。
「まぁ…会ってみりゃ分かるか」
山道をひた走り、やっと辿り着いたのは古びた…いや、昔ながらの風情がある旅館だ。
昔はよくみんなで風呂に入った。
宏樹様々だ。
宏樹の両親に挨拶し、宴会場に向かう。
広い宴会場を人数に見合った広さに仕切ってある。
同窓会と言っても、うちのクラスの一部の人達が集まっただけだ。
だから、すぐに分かった。
一人孤立して座っている。
短い黒髪。
お洒落さが全くない眼鏡。
その他諸々ひっくるめて「真面目」を絵に描いたような人。
その人が和樹だと。
「和樹、正浩連れてきたぞ」
顔をこちらに向ける和樹。
「久しぶり」
「久しぶり」
俺は和樹の前に座った。
「これで4人揃ったな」
勇太が俺の隣、宏樹が和樹の隣に座った。
「中学以来…だな」
昔のメンバー。
見た目は大人になったけど、気持ちは変わっていないはずだ。
「今日は飲もうぜ!うちの稼ぎに貢献してくれ」
宏樹が笑う。
そして、4人で笑い合う。
この久しぶりの感覚がとても気持ちよかった。