男子校の中学を受験し入学してから三年目。
すっかり男だらけの教室にも慣れ、来年高校受験を控える夏休み前の二限目の数学の授業。
後ろの席で板書していた俺に、右隣の席の鈴原がひそひそ話しで俺に耳打ちをしてきた。
「教科書みせて」
唖然とした。
受験生としての自覚あんのか。
ベロッと舌を出し、再び黒板に視線を移す。
するとガタガタと音をたてながら俺の机に机を合わせてきた。
「(おい…なにやってんだよ…)」
鈴原は真似するようにベロッと舌を出すと、黒板を指差し集中しろと言わんばかりに真顔でジェスチャーをする。
…まぁ静かにしてくれるのならいいやと半ば相手にせず、板書を続けた。
しかし、鈴原は一向に勉強をする気配はない。
授業も中盤にさしかかり、机に突っ伏し寝ていた鈴原がむくりと起きた。
「あべ…チンコ立った」
俺は一瞬ドキッとした。
中学一年の頃、俺はこいつと修学旅行先で一度軽く触りあいっこをしていたことがある。
中一にはよくある他人のものに興味があるというやつ。
好奇心からの行動だからゲイとかホモとかではない、と思う。
しかしそのときの興奮は今でも鮮烈に覚えていて、俺は少し顔が火照ったような気がした。
チンコのポジションを制服の上から直している鈴原をみて、俺は見てみぬフリをした。
「…」
「なんだよ」
「…ほれ」
ニヤニヤとしながら両手で自分の股間を包み、わざと形がわかるように見せつけてきた。