<続き>
大会を3日後に控えたある日、8名の強化メンバーの中から、
当日走る5名が発表されました。
タカユキ先輩は4区に選ばれました。
先行する選手との差を縮めてアンカーに襷を繋ぐ重要な役目です。
俺は残念ながら補欠でした。
担任から1人1人にユニフォームが配られました。
俺も補欠ではありますが、正規メンバーが当日怪我や病気で走れない場合、
代役として走る可能性もあるので、一式渡されました。
上下とも鮮やかな青で、横に白い幅広のラインが入った
ランシャツ、ランパンです。
丸めると両手の拳に収まってしまうくらいの軽く薄い、小さな布切れで、
こんな頼りない服で観衆の中を走るのかと想像して、
ちょっと恥ずかしくなりました。
その日も、先輩と2人並んで家路につきました。
10月を迎え、日はますます短くなって校門を出る頃には、
辺りはもう夕闇に包まれていました。
先輩はいつもより無口で、大会に向けて緊張しているように見えました。
「大会、お前と一緒に走りたかったなあ」
「まだ分かりませんよ、鳴海さんがまた腐った牛乳飲んで蕁麻疹になったら、
俺が走るかもしれません」
「ww」
「頑張ってください!俺、沿道から超超応援してます!」
「おう」
通学路から脇へ伸びる山沿いのサイクリングコースに差し掛かった時、
不意に先輩が言いました。
「…なあ… えーとさ… ちょっとこれ着て走ってみようぜ?」
「えっ?」
「ランパンでさ、当日に走る感じを掴んでおきたいじゃん?」
「あ、は、はい…」
思ってもいない展開に戸惑いましたが、
先輩の言葉の端に断れない雰囲気を感じて、その提案に従うことにしました。