<続き>
翌週から毎日、放課後の部活を免除された代わりに
駅伝の特別練習が始まりました。
特別練習と言っても、先生も駅伝の専門家ではありませんでしたから、
技術的な指導は特にありません。
とにかく学校外周のコースを徹底的に走りこむだけです。
同じクラスの他の男子に遅れて一人走っていると、
後ろから走ってきた3年の先輩に声を掛けられました。
「お前さ、吹奏楽部の奴だろ?」
「あ… あ、はい。」
俺が走っている間、先輩はずっと横に並んで、色々聞いてきました。
先輩はサッカー部でタカユキという名前でした。
小さい学校ですから何度か見かけた事はあったんですが、
学年も部活も全然違うし、俺の非コミュな気質のせいで、
話をするのは今回が初めてでした。
先輩は身長170cm以上あって、サッカー部で脚の筋肉も逞しくて、
当時の俺との身長差では凄く威圧感がありました。
顔は一重瞼で眉も細く整えていて、不良っぽくは無いのですが、
第一印象は怖そうな先輩でした。
でも、俺がどもって上手く喋れなくても、先輩はじっと待って聞いてくれるので
俺もだんだん安心して話せるようになりました。
先輩の家は途中まで俺の帰る道と一緒だったので、
練習後は毎日2人で帰るようになりました。
先輩も俺も格ゲー好きで、
交差点で別れるまでの間ずっとゲームの話は尽きませんでした。
それから先輩はワールドカップマニアだったので、
世界のサッカーチームや名プレイヤーについても教え込まれました。
先輩と話をするのは楽しくて、俺達はどんどん仲良くなっていきました。