入学式は大きい会場で、しかもすごい人数だった。大学ってすげえと思った。この大学を選んだのは、友達がいなかったから勉強だけはできたことと、恋愛もしたかったから、都会でそれなりの大きい大学ならどこでもいいと思ったからだ。
でも入学式では結局誰とも話せなかった。アパートに帰ってから、明日は絶対誰かと話すと決めた。今までの自分はもうさよならなんだと。
次の日、大学ではオリエンテーションがあって、すぐに何もすることが無くなり、外では先輩方が部活とか、サークルの勧誘をしていた。
色んな人が話しかけてきてサークルの宣伝のチラシをくれた。体育会系のサークルは無理かなと思いながら、ぶらぶらしていた。
その時、俺の視線はある一点に吸い寄せられた。
それは、高校の先輩でいつも目で追ってた人。
書道部の部室からいつも見ていたサッカー部の先輩だった。
その人はいつも一生懸命グランドを走っていて、いつも笑っていてたくさんの友達に囲まれていた。話しかけてみたい。一緒に出掛けてみたい。色んなこと話してみたい。そして、俺のこと好きになってほしいと思った。
結局目が合うことすらなかった先輩がそこにいた。
俺はどうしたらいいかわからなくて、傍にあったベンチに座り、ケータイをいじったり、チラシを見たりするふりをしながら先輩を見ていた。
このままじゃだめだ。部室の窓から見ていた時の俺と何も変わらない、何かしなくちゃ、そう思った。思い切って話しかけなくちゃ。
「サークルの宣伝のチラシください。」