わさん、ありがとうございます!
前のやつの最後、関心じゃなくて感心ですかね?
続きです!
「座って待ってていいぞ?てか、そうしてろ」
「わ、わかった」
座ってテレビをつける。
とりあえずニュースを観ながら食事を待った。
外食やインスタントなどを買っての食事が多かった家庭だったからこういうのはすごく新鮮で。
なんというか…。
楽しかった。
「ほい、おまたせ」
しばらくして、雄輔が丼を運んできた。
出されたのは親子丼。
見た目がすごくきれい。
匂いもイイ。
「食ってみ」
「い、いただきます」
きらきらと輝いている雄輔の瞳。
期待の目を向けられながら一口食べた。
…美味しい。
味わわなくても分かる。
すごく美味しい。
「どうだ?」
「美味しい…。初めてだよ、こんな美味しいの」
「お、そりゃよかった。冷めないうちに食っちまえ」
二カッと笑う雄輔。
恥ずかしくて視線を逸らすと、台所に戻り丼をもう一つ持ってきた。
「いただきます」
そして隣で食べ始めた。
誰かとの食事。
家族でもあまりなかったこの状況。
僕は黙々と食べた。
雄輔はそんな僕を見て嬉しそうに笑っていた。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」
一緒に洗い物。
誰かとやるとめんどくさいって気がしない。
「雄輔、ありがとね」
自然と出た言葉だった。
「いや、俺が好きでやってるだけだから」
照れくさそうに笑う。
こいつ、顔に出やすいよなぁ。
洗い物を終え、テーブルを挟んで座る。
「あのさ、明日も来ていいか?」
「え?」
「肉じゃがの材料も買ったし。いいだろ?」
「う、うん…」
「よし、決まり」
そう言ってまたテレビを観始めた。
帰らなくてもいいのかな?
もうすぐ8時になるけど…。
「雄輔、時間大丈夫?」
「ん?俺は大丈夫だぞ?」
「ならいいんだけど…。親、心配しない?」
「…しねぇよ」
笑ってるけど怒ってる。
それがすぐに分かった。
「わりぃ。言わないわけにはいかねぇよな。こんな迷惑かけて」
「いや、迷惑じゃないよ」
「ありがと。まぁ…簡単に言えば帰りたくねぇんだよ」
段々と真面目な顔になってきた。
「だからさ、お前が一人暮らしって聞いてさ。正直に言うと利用してやろうって思ってた」
家に帰りたくないから僕の家を利用…。
まぁ、当然だろう。
僕を友達と思って遊びに来るやつなんていないんだ。
「だけど、なんかほっとけなくなってさ。危なっかしいって感じで」
「どういう意味?」
「一人にしておくのが心配って意味。友達に対するってよりは弟に対する気持ちってのに近いかな」
良いのか悪いのか分からない発言。
まぁ、きっとイイことを言っているつもりなのだろう。
「ほんとに、迷惑だったら帰るし、もう来ない」
真顔でそういう雄輔。
こういう人って珍しいタイプだよなぁ…。
俺が知ってる同い年のやつらはこう…。
周りに合わせて、反発するのがかっこよくて。
でも、自分の意思の無いやつら。
だけど雄輔は自分を貫いてる気がした。
思ったことは言う。
悪いと思ったら正直に謝る。
当たり前だけど難しいことをやってしまうのだ。
「迷惑じゃないよ」
正直、うざったく思わないわけじゃない。
今までの僕だったら嫌いなタイプだ。
だが、今の僕には嬉しく感じた。
今日知り合ったばかりなのに、正直に自分の気持ちを話せる人ができて。
「だって、友達っしょ?」
そう僕が言ったら、雄輔は一瞬の間を開けて笑った。
僕は自分の発言を少し後悔した。
ものすごく恥ずかしい。
友達なんてクダラナイと思っていた自分がそんなことを言うなんて。
「あぁ、そうだな」
雄輔はさっきと変らぬ笑顔を見せてくれた。
「じゃあ、帰るわ」
9時近くになって、さすがに家に帰るそうだ。
「気をつけてね」
外まで見送りに出る。
「また明日な」
「うん。また明日」
走ってゆく背中を眺めた。
また明日…。
その言葉に自然と顔が綻んだ。
続きます。