帰り道。
いつもの公園のいつものベンチ。
違うのはワイシャツじゃないことと気まずい空気か。
「今日は楽しかったか?」
自販機で買った缶ジュースをコウキに渡す。
「あ、ありがと。楽しかったよ」
ぎこちない返事。
コウキはさっきのキスを気にしているらしい。
いや、俺もコウキの唇をつい見てしまうようになっているんだが…。
ここは何か言わなきゃ。
言わなきゃこれからこのままって感じするし。
「コウキ、キスくらい気にすんなよ。そりゃ初めてだったからショックかも知れないけどさ。ほら、こんなゲームでやったキスなんてノーカウントだ」
「…ショウ君は、僕とのキス、ショックだった?」
「え?」
予想外の返答。
「僕はショウ君とのキス、嫌じゃなかったよ」
ハッキリとした声。
そしてこちらを見る真剣な眼差し。
「俺だって、その…嫌じゃなかったよ」
恥ずかしい!
顔から火が出るとはこのことか!
だが、言ってよかった。
コウキが笑ってくれたから。
合宿当日。
バスで学校所有の施設まで移動。
本当に山の中。
コンビニ行くのに抜け出したら1時間はかかるんじゃないだろうか。
道中はコウキやハギワラと話した。
やっぱりハギワラは真面目だな。
着いたら荷物を部屋に運んだ。
先生の計らいか、コウキとの二人部屋だ。
その後、学年別の大部屋で勉強。
特に分からない問題は無い。
それはコウキやハギワラも同じだった。
…しばらくしたら休憩になった。
「なぁ、なんでコウキとハギワラは合宿参加したんだ?」
疑問に思ったことを聞いた。
「ご、ごめん。僕、トイレ行きたいの」
そわそわしながらコウキが小走りで部屋を出て行った。
小学生か、あいつは。
「家じゃ勉強に集中できないからさ」
なるほど。
確か、ハギワラは兄弟が多いらしいし。
周りで遊ばれたら邪魔か。
俺も猫を飼っているから分かる。
周りに来られるとつい構いたくなるし、無視するとノートに座る。
課題を取り組む側からしたら大変大きな障害だ。
「俺からも質問。コウキと付き合ってんの?」
「付き合ってないよ」
即答した。
「みんな、付き合ってるって噂してたよ」
「勝手なことを。俺にもコウキにも迷惑だろ」
そんなことを話しているとコウキが戻ってきた。
「ショウ君、先生から伝言。夕食後に部屋に来いってさ」
「わかった。ありがと」
いったいなんだろう。
疑問に思いながら、時間は過ぎていった。