4月のときから、ゼミの教授が飲み会を開こうと言っていたけど、皆バイトの都合などで日程が折り合わず、結局飲み会は前期の試験が終わってからの開催になりました。
明日から夏休みという開放感で、メンバーも教授もどんちゃん騒ぎ。でも僕と彼はそれには加わらず、ビール片手に二人切りで話をしていました。
酒が入ると、やっぱり会話は色恋のネタに。
「S(彼の名)ってさあ、やっぱめちゃくちゃモテるんだろ?」
僕が言うと、彼は謙遜して首を振ります。
「いや、別にフツーだよ」
「その顔で嘘つけ」
「そうでもないって。イケメンって言ってくれる女はいるけど、俺、すぐにかっこ悪い中身見せちゃうから、長続きしねーんだ」
「長続きしないけど、寄ってくる女はいっぱいいるんだろ?」
「まあ、な」
「いっつも違う女連れてたし」
そこでSが、「えっ」という顔をしたので、慌ててしまいました。入学式以来、彼のことを見ていたと白状しちゃったんですから。
でも彼は気にせず、すぐに適当な話題に切り換えました。
Sは意外と酒豪で、ビールから始まり、チューハイ、焼酎とちゃんぽんしまくり。おかげで、飲み会が終わる頃にはフラフラに。
ちゃんと帰れるか心配だった僕は、電車で彼を家まで送っていくことにしました。
飲み会のあったのは渋谷で、彼の家は新宿。山手線の中で吐いたりしないか心配だったけど、それほどには酔っていないようで、しっかり足で立ちながら、「俺の家で飲みなおそうな」などと言います。
彼の部屋にあがり、缶ビールと柿の種でまたワイワイと飲んでいたのですが、そのビールも空になる頃、Sは話題が尽きたように黙りこくりました。
酒でほんのり目もとを赤くした彼の顔はゾクッとするほど綺麗でしたが、ガン見はまずいので、ぼーっと天井を見上げていました。
そのとき、彼がふいに、一人言のように呟いたのです。
「K(僕の苗字)ってさ、もしかして俺のこと、前から気になってた?」
…前振りが長すぎですね。
次こそは、核心に移ります。