エレベータに乗ると、タクヤの体の奥から響く感覚がさらに強まった。
ふと「12」という数字が頭に浮かんだ瞬間、指がそのボタンを押していた。
エレベーターが上がるたびに、ドクン、ドクンと腰から体全体に響く衝動が
強まっていく。
エレベーターを降りて廊下を歩き出したタクヤはアキラのことを思い出した。
すると、タクヤの心に淫乱な衝動と、誰かに従いたいような気持ちがわき起こった。
さらに体のあちこちが、むずがゆいような感じに襲われる。
(このむずがゆさは、アキラなら治してくれるだろう)
タクヤの心の一部は自分自身に驚いていた。
今までそんなことを考えたことはなかったからだ、
しかし、アキラのそばにいたいという感情は圧倒的だった。
タクヤはルームナンバー1220の前で立ち止まり、震える手でドアをノックした。
そのノックの音を聞いて、アキラは小さく笑みをもらした。
目を開いて杖を見ると、3分の2ほどがコップに刺さっている。
ノックの音を聞くまで、この魔法が完全にうまくいく確信はなかった。
いや、いつもうまくいってはいたが、魔法に『必ず成功する』という保証はないのだ。
アキラは途中まで刺さった杖をそのままにして立ち上がり、ドアを開けた。
「ようこそ、中に入って」
その声は柔らかかったが、命令調でもあった。
「待ってたよ」
タクヤは吸い寄せられるように部屋に入った。
その目はアキラだけを見つめている。
アキラは静かにドアを閉めてタクヤを部屋の中央に導いた。