散乱した物を拾おうとしたら、もちろん【その人】と彼女?らしき女性も一緒に拾ってくれた。
俺は、とても恥ずかしく
「すいません!!大丈夫ですから!!」とものすごい勢いで、散らかったものを集めていると、
レジュメの一枚を拾った【その人】が
「へー、債権やってるんだーー。学部生?」
と言われ、俺は初めて声を聞いたこと、さらに声までかけられたことに驚きすぎて
「そ、そうなんですよ!!連帯債務とか連帯保証がごちゃごちゃになちゃってて、もう意味不明っす!!」
赤面して、そう答えるのが精一杯だった。
自分は社交性はある方だと思っていたが、緊張するとこんなにも言葉がでないものだと痛感した。
すると、その人はいたって冷静に
「民法は、しっかりやっておくと後がらくだよな〜〜。なあ?」と、隣の女性に話しかけ、その女性も「そうよねー、私も学部生からやり直したいわ。」なんて会話をしはじめてしまったので、
俺は拾ってもらったレジュメを受け取り
「ありがとうございました!!」
とだけ言って、走ってそこから逃げた。
駐輪場まで行くと、走るのをやめ、落ちたレジュメなどを自転車の籠に入れて、
自転車を走らせた。
帰り道、さっきの出来事を冷静に考えてしまう。
どんなきっかけにせよ、【その人】に話しかけられて、うれしかった。
ただ、そのあとの あの女性と浸しく話す姿を目の当たりにして、流石にショックを受けたのも事実。
多分、あの感じからして彼女なんだろう。
なんだか、急にむなしくなってしまい、片思いしていた自分に嫌気がさしてきた。
(ばかだなー、俺。)
そんなむなしい気持ちで、アパートに帰宅した。
部屋の前まで来て、鍵を出そうとカードケースを探す。
!!
カードケースがない!!!
俺は、カードケースの中に部屋の鍵を入れている。
しかも、そのカードケースの中には、学生証やら免許証や保険証やら個人情報の塊みたいものが入っていて、それがない!!
バッグにも、ポッケにもない。
と、思い出した。ここ数日はあの紙袋の中に入れていたことを。
破れた紙袋を探すがレジュメと六法しか入ってない。。。
やばい!!
でも、多分落としたのは学校。あの時に、階段を滑って下に落ちてしまったのだろうと考えた。
俺は、パニックになりつつも、とりあえず大家に電話してスペアで部屋の中に入れてもらおうと、携帯電話を開いた。
ところが、画面に知らない電話番号から着信が数回来ていた。
咄嗟に、大学の警備の人だと確信した。
あの時間は、もう学生も院生もいなかったし、警備の人か図書館の人が拾って、警備課に届けてくれたのだろう。そして、学生証に書いてある番号にかけてくれた。そう考えるのが普通だろう。
俺は、すぐに電話をかけ直した。
しかし、俺は重要なことに気づいていなかった。
その着信の電話番号が080から始まる携帯電話の番号だったことを。警備課だったら、固定電話からかけてくるはずだ。
でも、その時には そんな頭はなかったので、相手が出た瞬間に
「すいません!!今から警備課に行けばいいですか??」
と言った時には、時すでに遅しだった。。
「あの、僕は警備課ではないんだけど(笑)。さっき、階段にいた院生だよ。」
「えっ!!!」
俺は、その時、とんでもない声を出していたと思う。