〜コウスケの場合〜
「お疲れ様です!お先に失礼します!!」
俺は部活の先輩たちを後にして一人居酒屋を出た。
携帯を見ると時刻は0:30を過ぎたところだ。
だいぶ遅くなってしもうた。ジュンキまだ待っとるやろか?
今朝のランニングのあと、俺は部活に行き、ジュンキはバイトに行った。
日が暮れて練習が終わり、着替え終わって携帯のメールをチェックするとお決まりのようにジュンキからメールがきていた。
『まかない多めにもらえたから晩飯食ってないなら家来れば』
ジュンキは2か月前くらいから夫婦で経営している小さな洋食屋でバイトを始めていた。
甘いマスクのアイツのことだから、さっそくバイト先のママさんの心を掴み、いろいろと良くしてもらっているようだ。
まかないを余分に多くもらえるのもそのためで、その度にジュンキはそれをわざわざ俺のために持って帰ってくれて、このメールをくれる。
それにしても絵文字も句読点すらもない片言の文章やな(笑)
俺のことを「好き」とか言っておいてあいかわらず可愛げがない(笑)
こういう態度もひっくるめて俺はジュンキをいとおしいと思う。
まぁもうちょい甘えてくれてもええのにな、とも思うが。
『今部活終わったとこや!これから向かうで♪』
これを打ち終えて送信ボタンを押そうとしたその時、先輩から召集がかかった。
「コウスケ!お前も来るよな?」
そう言って先輩はビールジョッキを飲むしぐさをした。
まだ俺1年やし、先輩命令には従っとくべきやろなぁ。。
「はい!もちろんっすよ!」
俺はそう言って、メールを打ち直す。
『先輩との飲みが入ったから遅くなるかも!でも必ず会いに行くで!!』
送信ボタンを押し、時は流れ、0:30過ぎ。
ジュンキもう寝たやろか?
野球道具が詰まったエナメルバックをガチャガチャいわせながら俺は急いでジュンキの家に走った。
ジュンキの部屋の明かりはついていた。アパートの外から確認し俺は安心する。
よかった。明日は部活もないことやし、今夜はじっくりジュンキを満喫したろ(笑)
そんなことを思いながら俺はジュンキの家のドアノブをひねった。